書評本2冊。

正直書評。

正直書評。

文芸誤報

文芸誤報

豊崎由美のは「TVブロス」での、齋藤美奈子のは「週刊朝日」で連載の書評コラムをまとめたもの。どちらも旬な作品を取り上げた短いコラムで、ともに辛口の書評家である二人が似たような時期に似たような書評本を出すのもちょっと面白いな、と思った。立て続けに読んだものだからつい比べてしまう。
こういう短いコラムなら、やはり豊崎由美のほうが断然面白い。なぜなら貶すのも褒めるのも全力投球だから。テンションの高さと文章の短さがちょうど良く、ぐいぐいと読めてしまう。もちろん媒体の違いもあるだろうが、齋藤さんのほうは一貫して作品とは距離があるので読み物として面白いかと問われれば微妙なかんじだ。書評本が読み物として面白くあるべきかはまぁ読み手にもよるだろうが、わたしはやはり面白くあってほしいのでこういうタイプの書評なら今は豊崎さんのほうが好きかな。前にも書いた気がするが、齋藤さんはこういう旬の作品を扱うより、「妊娠小説」や「L文学」みたいに時代を問わずそのジャンルの小説を論じる、といった手合いのほうが面白い。
千野帽子さんとかも台頭してきて、どうにも最近書評が面白くなっている気がする。映画の宣伝するおすぎみたいに帯に馬鹿みたいなコメント載せる人たちは別にしてね。逆にこの人が帯にコメントを寄せるなら間違いないから買おうと思わせるような、そういう書評家が増えてくれるのはただ単純に嬉しいのだ。