「高校生ゴンクール賞」に注目!

asahi.com「仏で高校生の文学賞に注目 「本家」しのぐ売り上げも」というニュースに注目。


「高校生ゴングール賞」、たしかにちょっと気になってたんですよね。同賞を受賞した『ある秘密』(フィリップ・グランベール著、野崎歓訳、新潮社)を読んだとき、フランスの高校生ってこんなの選ぶんだ、センスいーじゃん、と思ったのだ。


上の記事によれば、高校生ゴングール賞とは、

 ゴンクール賞とは、日本でいえば芥川賞にあたるような最も知られた賞で、ゴンクールアカデミーの会員が選考にあたる。とすれば、「高校生ゴンクール賞」とは何なのか。
(中略)
 高校生ゴンクール賞は、ゴンクール賞の第1次候補作十数冊から選ばれる。毎年、候補が発表されると、フナックが、参加する高校のクラスに各7、8冊ずつを届ける。本は無料。一緒にお菓子も届けられ、ちょっとしたセレモニーが開かれる。

 参加はクラス全員が原則で、2年続けて同じ高校が参加することはない。表紙を見てどんな印象をもったか、本について意見の異なる2人の対話をイメージしてみるなど、さまざまな方法で批評の議論を深めていく。新作ばかりで指導要領などはないから、教師も自分で価値を判断しなくてはならない。

 2カ月かけて、いいと思った3作と、地方審査委員会に出るクラス代表1人を選ぶ。そこで再び3冊と代表を選び、レンヌ市のレストランで開かれる全国審査に臨む。高校生の代表が受賞作を発表する瞬間は、テレビでも報じられる。

すごいセレモニーですよね。小説と批評の甲子園ってかんじ。


同じく記事によれば「高校生ゴンクール賞のほうが優れた作品を選ぶ」と評価するジャーナリストもいるらしい。そうだろうなぁ。候補作をじっくり読んだり議論したりする時間もあるし、風評とかに左右されることも少ないだろうし、利害も関係ないし。
それにしても驚くべきはフランスの高校生の読書における偏差値の高さかもしれない。「読書における偏差値の高さ」っておかしな言葉か。「読書力」……?それも違う。まぁいいや。
ただわたしは『ある秘密』を選ぶという、そのセンスに、日本とはかなり異なるセンスを感じたわけで。


この賞は19年前にひとつの地方で始まったささやかな読書教育の試みが、今では全国的に広がったとのこと。こういう環境があれば、どんな国の高校生でももっと、小説と批評そのものに近づくんじゃないかなぁと思う。ものごくいい勉強になるだろうし。ゆとり教育とかやってるヒマがあれば、こういう企画力を期待したいもんだ。


ただ今の日本でこれをやろうとすれば、例えば直木賞芥川賞の候補作から高校生に選ばせるとして、でもそれに価値が出てくるのは20年以上かかるだろうなと思う。候補作自体どうだって話もありますからね。
でも国内外の作品含めて、こういう高校生による賞をもうけるというのは、時間はかかっても絶対にいい効果を生む政策だと思うんですが、どうですかね文部科学省さん。


ある秘密 (新潮クレスト・ブックス)

ある秘密 (新潮クレスト・ブックス)

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