マグヌス(シルヴィー・ジェルマン)

マグヌス

マグヌス

というわけで、上のニュースを読んで激しく興味がかき立てられたので、高校生ゴングール賞受賞作を携帯にメモメモ、しかし近隣の書店にあったのはこの『マグナス』だけでした。うん、そんな地味さも好きだ!


で、本作。戦火を生き抜いた少年が、自分自身を探す、もしくはぶちあたる、ドラマチックな物語。もちろん、「自分探し」みたいな気持悪い言葉からは遠いストーリーですよ?

マグヌスは、ぬいぐるみのクマの名前。五歳で記憶喪失におちいった男の子は、このクマを肌身離さず持っていた。ナチス党員の父親は、敗戦後も逃げのびて、単身メキシコへ逃亡、自殺を遂げる。そして生活に疲れた母もまた……。しかし、大人の都合で何度か名前を変えさせられた男の子の過去は、嘘とつくり話で塗り固められたものだった。そこから彼の長い旅がはじまる。舞台はドイツからイギリス、さらにメキシコ、アメリカへ。
驚異的な記憶力をもち、数ヶ国語をあやつる彼だが、自分はいったい誰で、どこからきたのかもわからず、本当の名前を知らない。マグヌスだけが唯一の過去の証し。読む者の予想を裏切りながら、ドラマチックに進んでゆく物語の底には、さまざまな小説的興奮が潜んでいて、「小さな本なのに、十冊も読んだようなこの印象はどこからくるのだろう」と評されている。ますます注目される《高校生ゴンクール賞》を2005年に受けた、ベテラン作家シルヴィー・ジェルマンの最新作。

ちょっとめんどいのでアマゾンから引っ張ってきました。


主人公の生き方は、ひどくシンプル。でも追いかけてくる影。いくら切り捨てても亡霊のように現れる過去。
束の間の希望と、計ったかのように現れる絶望に、主人公とともに揺れる揺れる。

ただ個人的には宗教的な側面をばんばん感じるシーンに、ちょっと違和感。もーそれは読み手次第だけど、わたしからすれば根拠のないSFと同じだから。

とはいえ面白かったです。最近翻訳モノを苦手としてたわたしが一気読み。前半はナチスドイツとのスリリングな関わりにヒヤヒヤドキドキしながら、後半では「再生」の力強さに胸を打たれ、ぐいぐい読まされてしまったんですもの。赦し、つながり、愛……さまざまな感情を濃く感じさられる作品でした。


上に挙げた記事がなかったら絶対出会えなかった作品。というわけで、「高校生ゴングール賞」で邦訳されてるのは読んでみようかなと思います。たぶん、わたしは好きだろうし。。。