米原万里さんが亡くなった

ことを、ネットのニュースで知った。驚いた。そして寂しくなった。

 ロシア語通訳でエッセイストの米原万里(よねはら・まり)さんが25日午後1時12分、神奈川県鎌倉市内の自宅で卵巣がんのため亡くなっていたことが 29日、分かった。56歳だった。東京都出身。葬儀は親族で済ませた。後日、友人葬を行う。喪主は妹で作家井上ひさし氏の妻、井上ユリさん。
 少女時代、父親の仕事の関係で旧チェコスロバキアプラハソビエト学校で学んだ。東京外大卒。ロシア語通訳として活躍、エリツィン元ロシア大統領の来日時には随行通訳を務めた。
 軽妙な筆致のエッセーでも知られ、2002年、少女時代の体験をつづった「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」で大宅壮一ノンフィクション賞。「不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か」で読売文学賞、「オリガ・モリソヴナの反語法」でドゥマゴ文学賞を受賞した。ロシア語通訳協会会長も務めた。
 父は元共産党衆院議員の故米原昶(いたる)氏。 
時事通信) - 5月29日18時0分更新

米原万里さんの著書を初めて読んだのはわりと最近、一年くらい前で、はてな仲間のevergreen77さんに『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』をオススメしてもらって読んだのだ。その時の感想はコチラ↓

著者は小学生の頃、共産党員であった父の仕事の都合でプラハに移り住み、ソビエト学校に通っていた。本書はその時代の記憶とそこで友達となった3人の少女のその後の人生を描いたノンフィクションである。勉強はできないが男と女のことにかけてはいっぱしのオーソリティーなギリシャ人のリッツァ、嘘つきだがなぜか憎めないキャラのルーマニア人・アーニャ、頭がいいが近づきづらいユーゴスラビア人・ヤスミンカ。著者が帰国してから徐々に連絡が途絶えた3人を、著者は20年ぶりに訪ねていく。激動する東欧諸国の事情をバックに、平坦ではなかった彼女たちの人生が語られる。
う〜ん、これは面白い! 描写も展開もうまくて読ませるが、やはりテーマが素晴らしいからだろう。政治や宗教、民族などの問題を織り込みつつ、3人の少女と大人になったもと少女たちのリアルが丁寧に描かれてる。いろいろ考えさせられる一冊でもあった。

これまで読んだノンフィクションのなかでもベスト3に入る傑作だった。やりきれなくも、<生きる>ことを真正面から描いた素晴らしいノンフィクションだと思う。
そのほかエッセイでは、通訳の舞台裏をユーモアたっぷりに描いたものあり、独自かつ親しみやすい視点で描かれた文化論あり、どれも著者の太っ腹で明るくて気っぷのいい性格がにじみ出る作品ばかりだった。未読の作品も多いので、これからゆっくりと読んでいきたい。
嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫) ガセネッタ&シモネッタ (文春文庫) 旅行者の朝食 (文春文庫)