SIGHT別冊「日本一怖い! ブック・オブ・ザ・イヤー2006」 (別冊SIGHT)(SIGHT編集部・編/ロッキング・オン)

SIGHT別冊「日本一怖い! ブック・オブ・ザ・イヤー2006」 (別冊SIGHT)
「このミス」は立ち読みで済ませるけど、こちらは買います。だって北上次郎×大森望高橋源一郎×斎藤美奈子の対談に加え、豊崎由美のコラムもあるんだもの。楽しみにしてましたよ。
目玉はやっぱ北上次郎×大森望の対談ですね。高橋源一郎×斎藤美奈子のほうも興味深いけど、読み方があまりに玄人っぽくて共感はしづらい部分があるし。北上次郎×大森望はあくまでも読者目線なので共感できるし、何より二人の好みが根本的に異なってるから、純粋に対談という読みものとして面白いんだよね。その好みの違いについて北上氏が「大森くんは、その作家が新しいことやった実験が好きなんですよ。僕はその作家の美点が一番活きる安定した作品が好きなんですよ。という違いじゃないでしょうか」と解説してますが。二人の意見がまとまるより、徹底的に食い違ってる方がおもしろい。『ディアスポラ』に挫折した北上次郎の気持ちはよくわかるぞ。いやわたしは途中で放置してるだけでまだ挫折したわけじゃありませんが。


「このミス」では国内は『容疑者Xの献身』が見事一位をゲットしたようで。今年あんまり国内ミステリ読んでないので比較対象があまりないけど、たしかにあれは良かったものね。翻訳での一位が『クライム・マシン』というのが意外。いや面白かったよすごく。めちゃめちゃレベル高いし。でも短編集だし「このミス」で選ばれるイメージとはかけ離れてたんで。版元かなりあせってるんじゃなかろうか。重版かかるなんて出版当初は思ってなかったんじゃないかしら。便乗してジャック・リッチーの他の短編もまとめて出版してくれると嬉しいなぁ。


ついでに「本の雑誌」での1位は「風味絶佳」。これは嬉しい。高橋源一郎×斎藤美奈子の対談でも豊崎由美の書評でもこの作品は絶賛されてて、その褒め方が「この句読点の打ち方がたまらなく素晴らしい」というやたら玄人受けする作品ではあるが、わたしはそこまで気付いてよんでたわけじゃないが、確かにすごく読んでいて気持ちいい作品だった。こんなに隅々まで丁寧に書かれた小説ってなかなかないもの。読み返したくなってきたなぁ。
ちなみに二位の『シャングリ・ラ』は北上次郎×大森望の対談でもめずらしく二人ともこの作品を褒めていた。わたしも一気読みしちゃったけど。しかし「このミス」にもベスト10入りしてたのが、これまた意外だった。「このミス」っぽいかどうかということではなくて、これ完全にSFじゃん!? ミステリの要素あったっけ? いくらジャンルのボーダーレスな時代とはいえ、これはSFど真ん中だろうよ。ま、なんにせよこれがきっかけで売れてくれればうれしいわけだけれども。