落下する緑 永見緋太郎の事件簿 (創元クライム・クラブ)(田中啓文/東京創元社)

落下する緑 永見緋太郎の事件簿 (創元クライム・クラブ)
この人の作品読むのは「笑酔亭梅寿謎解噺」に続いて二冊目。「笑酔亭〜」と同じくこちらも本格ミステリ連作集だ。
若きジャズマン・永見緋太郎。あきれるほどに無知で世間とずれてはいるが、妙なところで勘が鋭く不思議な男。そして天才肌のテナーサックスプレイヤー。永見の所属するバンドのリーダーである唐島は、ジャズ以外の芸術にも目を向けさせようと永見を知り合いの展覧会に連れ出すが、変な事件に巻き込まれ…。
永見のキャラがめちゃめちゃいい。世間知らずのせいか大御所にも不遜な態度だし空気読めてないけど、でもすべてのことに対してその<本質>を見抜く目を持ってる。シャーロック・ホームズを知らないのに、謎は解いちゃう。変だけどとても魅力的。そしてどれも人情味あふれるストーリーで、好感度高い。一番好きなのは伝説のブルースマンが登場する「挑発する赤」かな。永見がジャズマンとしての才能を利用して謎を解いちゃう「砕けちる褐色」も迫力ある演奏シーンが印象的で捨てがたいが。しかし「遊泳する青」に登場する時代小説の大御所<湖波性太郎>って…遺族に怒られるぞ…。
それにしても読み始めたら止まらなかった。一編読み終えてもすぐに次が読みたくなる。シリーズ化してほしいな。