やどかりとペットボトル(池上永一)★★★★★

やどかりとペットボトル

やどかりとペットボトル

待ってました!池上永一の最新刊。といっても小説ではなく、初のエッセイ集なんでございます。
いやー笑わせてもらいました。とくに石垣島での子ども時代なんて、まさに池上永一の小説の世界そのまま。当たり前か。「ホントかよー」と内心疑いつつも笑いが止まらないのであります。雷を呼ぶ幼稚園児に、常識を突き抜けた母親の教育法、見知らぬおばあさんが寝起きしているお化け屋敷。こんな島で育ったらどんな不思議なことも受入れて生きていくしかない。でもなんかすごく楽しそうだ。
上京してからもなかなか強烈なエピソードが多いんですよね。近所のオバさんとの代理戦争に摩訶不思議な愛人ラーメン、万引きGメンを出し抜く!? 犬も歩けばではないですが、小説家も歩けばトラブルにぶつかる? もしくはぶつけてる? 池上永一のキャラが最高です。
でも笑えるのばかりでもなくて、ひとりの沖縄人として、急速に戦争を忘れていく本土の風潮へのストレートな意見や戦中戦後に日本が沖縄に何をしたのかということをつづったものもあり、ハッとさせられる。歴史を語り継がない国はどうなるんだろう。
そのほか物語の臭いを嗅ぎ付ける(けどバカ)オキナワン・ハスキーの行動に驚いたり、オバァとの思い出にほろっときたりして。なんだかお腹いっぱいなエッセイ集でした。小説も楽しみだけど、さっそく次のエッセイ集も楽しみにして待ちます!

女の子のための漫画×カルチャー誌「Beth vol.1」創刊


かわいくてキレイが好き、そしてちょっとオタク……。
そんな「キレイ系オタク」なあなたのための、新しい雑誌です。

だそうです。ちょっと興味本位で買ってみましたが、スミマセン、巻頭の小川鞠生の作品からドン引きでした。巻頭がコレってことはターゲットは同人誌とかやってる女の子なんですかね……と思ったものの、全体を眺めてみるとそうでもないかなぁ。普通に「Kiss」に掲載されてても違和感ない作品が多いかも。連載陣かぶってるし。
普通に楽しめたのは、
ひうらさとる「女子高生チヨ(64)」
この人エッセイ漫画の方が向いてる気がする。
望月玲子「鳥類学者のファンタジア」原作/奥泉光
タケコさん」終了でさっそく新連載とは。この人の絵はけっこう好きです。そいえばこれ原作買ったまま読んでない……。
岩岡ヒサエ「オトノハコ」
初めてこの人の作品読んだけど、好きかも……。
ヤマザキマリ「それではさっそくBuonapetito!」
「kiss」で連載してた「モーレツ! イタリア家族」も好きでした。今回はお料理メインのエッセイ漫画のよう。単行本出たら買おうかな。

そんなかんじでした。世間的にはどうなんでしょうか。

Cobalt (コバルト) 2006年 12月号 [雑誌]

Cobalt (コバルト) 2006年 12月号 [雑誌]

Cobalt (コバルト) 2006年 12月号 [雑誌]

この雑誌の存在を初めて知りました。当然手に取るのも買うのも初めてです。コバルト文庫っていきなり文庫から出てるもんだと思ってた……。
コバルト文庫を読まなくなって久しい今になってなぜ購入したかというと、桜庭一樹のブログで、彼女と古川日出男のリレーエッセイが掲載されてると告知があったもんで、それだけのために買ってしまいました……紐で縛ってあったんだもの。二人あわせてたった4ページでした=( ̄□ ̄;)⇒
「恋するヒーロー♡ヒロイン」というコーナーで、人気作家が大好きな作品のなかのさらに大好きな登場人物について語る、というものらしいです。古川氏は『銀河鉄道の夜』(アニメ映画のほう)、桜庭氏は『シャーロック・ホームズの冒険』をチョイス。『銀河鉄道〜』は観たことないのだけど、すぐにでもレンタルビデオ屋に走りたくなった。ホームズも小学校の図書館で借りた子供向けのしか読んだことないし、何より記憶も薄れてるから改めて読んでみようかと思う。ていうかこのコーナーいいな! 好きな作家が好きな作品について語るエッセイって好きなんですよね(一文で「好き」を三回使った!)。好きな作家の好きな作品って自分も気に入ることが多いし、日常系エッセイの中でさらりと触れられるより、がっつりひとつの作品について語るエッセイのが濃いし愛所が滲み出て好ましいのです。ちなみに来月は中村航氏と栗田有起氏が担当するようです。


もちろんほかに読みどころがないわけじゃないんですよ? ただほとんどの小説が連載モノなんで途中からは読みづら……
赤川次郎「吸血鬼の秘湯巡り」
( ̄△ ̄;)エッ・・?

コ、コレってわたしが小学生のときに読んでた「吸血鬼」シリーズ? まだやってんのか! ビックリだよもう。読み切り形式っぽいしせっかくなので、久しぶりに読んでみましたよ。
秘湯!不倫!殺人!……コレで吸血鬼さえ出てこなけりゃ火曜サスペンス劇場いけますね。あ、火サスってもうなくなったんだっけ? それはいいけど、まぁ十何年ぶりに赤川次郎を読んじゃいましたね。小学校のころはこの吸血鬼シリーズとか三毛猫シリーズを読んでたなぁ。懐かし。
アマゾンで調べてみたところこの「吸血鬼」シリーズが出たのが1981年。もう25年もやってんのか……。すごいですねぇ。


というビックリもありつつ、あとはノベル大賞と短編小説新人賞の受賞作が載ってたのでそれも読んでみようと。
しかしノベル大賞の方は、キャラ設定とか冒頭のあたりが手垢つきまくりな感じなかんじにうんざりして読むのをやめてしまった。完成度云々よりも「ツカミ」は大事だと思うんだけどなぁ。
短編小説新人賞で掲載されていたのは入選作『昨日見た夢の魚が死んだ目をしていた件』(魚)で、めちゃめちゃ粗いけど、要所要所のシーンでのインパクトがあった。練習してもっとテクニック身につければ化けそうなキレがある。がんばれ。


いやーでもこの雑誌の存在自体に驚きました。ティーンズ向けの文芸誌ですね。いいじゃん。ニュースでは「活字離れ」という言葉が今も忘れた頃にちょこちょこ出てくるけど、そんなに「離れ」てないよ。ていうか「活字」を読むから何なんだ、それで上等な人間になれるのか、と自堕落な活字中毒者は思うのだ。