ジェノサイド(高野和明)

ジェノサイド

ジェノサイド

これは前評判通りおもしろかったー!この数日忙しくてさすがに一気読みはできなかったのだけど、目をこすりながら少しでも先を読もうとがんばったのは久しぶりかも(笑)
難病に苦しむ息子の治療のためにコンゴでの特殊任務を引き受けた傭兵、父親の突然の死から謎の新薬研究に巻き込まれていく東京の大学院生、謎の生物の抹殺計画を命じられたアメリカの情報分析官。彼らがそれぞれに直面する謎が絡み合った先に見えたのは、人類滅亡の危機。
“人類滅亡の危機”なんていうとなんだか大味なSFっぽくて普段ならあまり手が伸びない類いなのだけど、この作品は本当にうまくできている。思わず引き込まれるだけのリアリティーはあるのに、SFSFしてないというかあまり難解ではなく、ミステリ的な謎解きとタイムリミットによるスリリングさでぐいぐい読まされる。
さらにこの小説の肝であり全体にまぶされたスパイスのような役割も果たすのが「人間の愚かさ」であり、それの最たるものが小説のタイトルでもある「ジェノサイド」である。描かれるジェノサイドの様子は思わず目を覆うほどでこれこそが架空の話であってほしいと願わずにはいられないが、これは現実だとわたしたちは知っている。吐き気を催すほどの愚行を人類は誕生以来繰り返し、それが止む気配は今もまだない。だからこそこの物語が、まるでいつか来るべき未来の物語のように思えるのかもしれない。
今年のエンタメジャンルでは確実にベスト3に入りそう。面白かったです!