死角 オーバールック(マイクル・コナリー)

ボッシュシリーズ最新刊。
こうして長く続いている翻訳シリーズもの絶えず読み続けていれば主人公の人生にも相当付き合っているはずなのに、その過去の経緯をイマイチ覚えてないものだ。まあ自分のことでさえすぐに忘れてしまうのだから、他人のしかもフィクションの登場人物の人生についてまで覚えているはずもないのだけど。
ざっくりとまとめると本シリーズの主人公ハリー・ボッシュは、最初は殺人課の刑事→退職して私立探偵に→ふたたび警官に復帰、未解決事件担当になる→ふたたび殺人課へ(今ココ!)……な、はず。違ったらごめんなさい。

そんなわけで新しい職場に移ってずいぶん年下の新しいパートナーと組んだボッシュの初仕事、それはロスの展望台で発見された射殺体から始まる。直後に現場に駆けつけたのはボッシュだけでなく、現れた彼の元恋人でFBIのレイチェルは、被害者の身元からこの殺人事件は大規模なテロ事件に発展する可能性があると主張する。殺人事件か、テロの序章か。ロス市警とFBIの捜査方針の対立を絡めながら、物語は意外な方向に転がっていく。

序盤はどうしても「24」を彷彿とさせる展開で、猫も杓子もテロだねえ、なんて正直ちょっとうんざりしながら読んでいた。最強のノンストップサスペンスだって回数重ねりゃ飽きるのだ。

ところがところが、いやはや、失礼しました。ハリー・ボッシュが、マイクル・コナリーが、そんな安い流行にまんま乗っかる訳なかったですよ。残り3分の1くらいからのギアチェンジに、久しぶりにどんでん返し系ミステリに翻弄される快感に酔いながら集中して一気読み。スピード感といい読者を裏切る展開といい、翻訳ミステリの中でも長寿なシリーズ物なのに今だ色あせない、飽きがこないというのもすごいことだなと改めて思いました。