純平、考え直せ(奥田英朗)

純平、考え直せ

純平、考え直せ

ひさびさ、奥田英朗の新刊。

歌舞伎町で生きるヤクザの下っ端、純平は突然、鉄砲玉を命じられて快諾。実行までの自由な三日間、予想外な出会いの連続に翻弄されつつタイムリミットは刻々と迫ってくる。一方、ネットでは純平に関するスレッドがたてられ、完全にネタ扱い。純平の決断は…?

ん〜、軽く読むにはピッタリだけど、奥田英朗にしてはキレがないな、というのが正直な感想。

半人前にもなれてないヤクザの下っ端とか、ホームレスになった元大学教授とか、夜遊びがすべてな派遣OLとか、悪徳警官とか、こういう、ちょっとダメな人間描かせたらやっぱ上手いじゃないですか奥田英朗。人を殺す、までいかなくてもとりあえず銃で人を撃つ、そして警察に出頭して逮捕される、っていうゴールが目前にあるのも否応なく物語を盛り上げてくれるわけだし。なのになぜか物足りなさが最後までつきまとう。奥田英朗っていうハードルの高さを勝手に設定しといて勝手にがっかりしてるだけ、と言われればそのとおりなんですけどね。

あと、物語における存在価値がイマイチ理解できなかったネットの掲示板の部分なのだけど、リアリティーがないんだよね。そういう掲示板を見たことがない人でも理解できるようにってことなんだろうけど、普通の言葉で書いてあるのがちょっとなあ。アスキーまで入れろとは言わないけど、スラングとかは使わないと雰囲気がまったく出ないからねえ。ディテールにこだわってこそだろ!とわたしは思いますよー。


ま、繰り返しにはなりますが、軽く読むにはピッタリ。わたしも良い息抜きさせてもらいました。あ、そうそう、このラストはどうなの?と思わないではないのだけど、そこも含めてのスピード感が最後まで持続してたからアリかなーと思います。