判決の誤差(戸梶圭太)

判決の誤差

判決の誤差

いやもう、ちょっと本作は装丁と帯の悪ふざけが最高。編集者もノリノリだったでしょう。帯のアオリは以下。

(表)
人を裁く準備はあるか?
凶悪事件の裁判に選ばれたの6人の裁判員
判決を下す彼らにあるのは、正義か、打算か。
瞠目の法廷ミステリー
(裏)
2009年5月。私たちが裁判に参加する。対象になる事件は、殺人・強盗などの重大な犯罪。“市民感覚を反映する”ということだが、法律の専門家でもない私たちにできることは何なのか。人が人を監視し、裁く時代。真の“民意”が剥き出しになるとき、私たちはどう生きるべきか。リアルな社会をリアルに描く、リアルな法廷ミステリー。
「その語り口に、騙されるな」

これは素晴らしいよ。トカジなんて知らない、久々に小説でも読むかな、お、これはもうすぐ始まる裁判員制度にも言及してあって面白うそうじゃないの、なんて思って買って読んで激怒する人が全国で二三人はいるんじゃないのか。
かくいうわたしも、トカジの小説なんてたっぷり読んでついでに最近ちょっと飽きたので離れていたのに、あまりのギャップを感じるタイトルと装丁に興味惹かれて買って読んじゃってるし!
本当に今作は編集者と出版社の悪ふざけ演出が突出して素晴らしい。中身はホントいつものトカジで、それでも笑えるは笑えるんで二三年に一度読むくらいはいいかなと改めて思ったのだけど、読み終えてカバーを見返せばまた笑えるのだからおいしい。なんだよ「判決の誤差」って。
でもあまりにも馬鹿デフォルメしてあるものだからあっさり忘れてしまいそうではあるけど、でも本当に裁判員制度ってどうなのよと背筋が寒くなる。
本来なら一生関わることもない人間の犯した罪を問う裁判になぜ責任ある立場で関わらなければならない? しかも現行の方針では明らかに裁判所にかかる負担は減るどころか増えるとしか思えないのに。市民感覚を反映させたいなら、司法試験の前後にインターン的な職業訓練を義務化すればいいじゃないか。関係ないと切るわけじゃないが、あまりに不利益が多すぎる。実際に始まったら問題が噴出するんだろうなぁ。それでも決まったことは決まったことと、形骸化されるんだろうけど。ホント、真の目的は何なんでしょうね。