死刑基準(加茂隆康)
- 作者: 加茂隆康
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2008/11/26
- メディア: 単行本
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もう、ツッコミどころ満載で逆に困る。小説としてどうかと論じる前に、フィクションであれこれを書いたのが現役の弁護士なのかと思うと軽く目眩も覚える。
まず、タイトルと中身が全然関係ないのが笑える。というか死刑否定派の代表だった弁護士が、身内が殺されたのを境にあっさり死刑肯定派に転じるってどうなの。あり得ないと言うか、その論争を馬鹿にしているとしか思えない。しかもこの物語のオチあたりは死刑云々はまったく関係ないのだからビックリする。せめて無期か死刑かを争う法廷がクライマックスになるのかと思ってたのに肩すかし。
それから登場人物の女性だけ、服装から体型に至るまでやたら書き込んでるのは、もう笑うしかない。なんかもう、舐め回すような視線そのものな描写が気持ち悪いっす。加えてその女性たちのほとんどが実際のストーリーにほとんど関係しなかった事実を読み終わって気付いて本当にビックリした。なに、まさか書きたかったからただ書いたの? 勘弁してよー。
それに「法医学によれば絞首刑は一瞬で意識を失う」みたいなことも書いてあるけど、他の死刑に関するノンフィクションだと20分くらい苦しむケースもあるらしいんだけど……。自分の目で見たわけではないからわからないけど、そういうのさらっと書いちゃうのってどうなのと思わないでもない。というか、そういうのを知らない人がこんな大仰なタイトルの小説を出す、その無神経さにまた背筋が寒くなる。
それともう、ここまで来たら突っ込むでもないだろうオチ、ね。なぜ取引を持ちかけられるとも知らなかった人間が録音装置用意していたのか。誰も理解できないでしょう。こんな、出オチな証拠があるならミステリも警察小説もリーガルサスペンスも必要ないね。
ひどい。本当に全般にわたってひどいのを、著者に理解してもらいたい。あとこれにオッケー出した編集者と出版社にもね。本当につまらない。稚拙でも良いからタイトルに恥じないような濃いものを、と期待してましたよ。