硝子のハンマー(貴志祐介)

硝子のハンマー

硝子のハンマー

先日読んだ「野性時代」の読み切り短編で初めて読んで気になったので、他の作品にも手を伸ばしてみる。

日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、有人のフロア。
厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。
すべてが不明のまま、逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。青砥純子は、弁護を担当することになった久永の無実を信じ、密室の謎を解くべく、防犯コンサルタント榎本径の許を訪れるが―。

久々に楽しめる長編ミステリでしたね。青砥&榎本サイドから真実を探す前半から一転、後半では犯人の半生を語ることによって、単なる謎解きミステリより厚みを感じる一作。スピード感があってぐいぐい読ませてくれました。人間が描かれているし、ミステリとしては好みのタイプです。次は『青の炎』読んでみようっと。

ただトリックとかは読み流すわたしとしてはめずらしいことにちょっと疑問も。

ガラスに付着した社長の頭皮の油分、スーツで拭いても完全に消えるとは思えないし、だったら鑑識が見つけるのでは……ま、根拠はありませんけど。