そんなはずない(朝倉かすみ)

そんなはずない

そんなはずない

やっぱりね、朝倉かすみは今一番注目すべき作家の一人だと、確信しました。

このノリツッコミ!けっこうなサプライズもあり。
読者を翻弄する筋・隙のない文体・嫌みなまでも細部ーーー
そして読了後の、充実した疲れ。上手すぎてちょっと腹立つんですけど。

帯の推薦文は、千野帽子氏。『文壇ガーリッシュ』でのあの鋭い毒舌批評を読んだ人なら、このコメントを読んだだけでも食い付いちゃうのでは?

松村鳩子は、30歳の誕生日を挟んで、ふたつの大災難に見舞われる。婚約者に逃げられ、勤め先が破綻。自分を高く売ることを考え、抜け目なく生きてきたのに。失業保険が切れる頃、変わりものの妹・塔子を介し年下の男、午来と知り合う。そして、心ならずも自分の過去の男たちとつぎつぎに会う羽目に。さらに、新しい職場である図書館の同僚たちに探偵がつきまとい、鳩子の男関係をかぎまわっている、らしい。果たして依頼人は? 目的は?

ネタバレになってしまうのであまり内容については触れられないのだけど、ものすごく不思議な読後感。展開がね、ぜんぜん読めない話なんですよ。話の筋もそうなんだけど、この小説を読みながら受ける印象もまた予測不可能。イライラしたり、背筋がひやっとしたり、くすくす笑っちゃったりもして。どういう小説?って聞かれても、とても答えられそうにもない。面白いということだけ、太鼓判を押しとこう。

個人的なお気に入りとしてはやはり、探偵・野村大介との絡みだ。勘違いぶりがおかしくってしようがない。友達になってみたい気がしたけど……女友達とかできそうもないタイプだよな。