〈プラチナファンタジイ〉 奇術師 (ハヤカワ文庫 FT)(クリストファー・プリースト)

個人的に初プリーストであった『魔法』を読んだ直後に、これはスゴいと、さっそくこの『奇術師』を購入したんですよ。でも読んでるうち(たぶん前半)にも、他の作家の新刊とかガンガン読んでたらなかなか戻れなくて放置してしまってたんです。それから一年とちょっと、今度はプリーストの新刊『双生児』を読んで、これまたホントにスゲーと、でも引っ越ししたまま片付けられない本の山に格闘するよりも、整然と並んだブックオフの棚から購入してしまいました。


本作はちょうど今、日本で公開されている映画『プレステージ』(正しくは『プレスティージ』だよね?)の原作で、19世紀から20世紀をまたにかけて活躍した、二人の奇術師の因縁を核とした物語である。ひとりは<瞬間移動>というイリュージョンを発明したアルフレッド・ボーデン、そして<瞬間移動>をさらに改良した<閃光の中で>で一世を風靡したルパート・エンジャ。エンジャの子孫であるケイトと、ボーデンの子孫であるアンドルー、二人の出会いは、ボーデンとエンジャが<奇術師>として残した記録によって翻弄される。


やっぱ面白いわ〜〜! わかってたけどね? 何が面白かったって、読み終わってなお、まだ騙されてるんじゃないかって疑いたくなるほど、その世界に飲み込まれちゃうのよ。事実と思われていたものが、パタパタと裏返る後半。そして、いやもうこれホラーでしょ、なラスト。プリーストの作品は、確実にわたしの脳内をたっぷりと刺激した上、こんな作品読めて幸せだなぁとまで思わせてくれちゃうんだよな。最高です。刺激的という意味では今現在、プリーストが自分のなかでナンバーワン。


今さらにもほどが過ぎますが、オススメな一作です。