当確への布石(高山聖史)

当確への布石

当確への布石

読書体力衰弱が進行中。そこでテコ入れはやっぱグイグイ読める国産エンタメだな、と選んだのが本書。2007年『このミステリーがすごい!』優秀賞受賞作だ。「選挙と陰謀を軸にした迫真のドラマ」とのことで目新しさがあるし、選考委員の一人でもある吉野仁氏によれば、応募時の原稿より全面的な改稿を行なったことで「中身は大賞にひけをとらない面白さである」とのこと。ちょっと期待して読み始めた。


「犯罪被害者の権利獲得」をスローガンに、衆議院補欠選挙に立候補した大学教授・大原奈津子。ワイドショーのコメンテーターとして知名度は抜群なうえ、自らも性犯罪被害者であることを告白しており、無所属新人であっても勝てる要素は確実にあった。しかし何故か奈津子の選挙活動と並行し、「凶悪犯罪抑止連合会」と名乗る団体が、出所した凶悪犯罪者の顔写真や現住所などの詳細な情報を記した大量のビラを撒く、という事件が起こる。「抑止連」は奈津子の敵か、味方か。奈津子は知り合いのもと公安刑事・栄治に内密に捜査を依頼する。また他方では、ある雑誌記者が大原陣営を揺るがす大スキャンダルを追っていた……。


というわけで、間違いなく楽しめそうなプロットなんだけどねぇ。
明らかに使い慣れない言葉を使っていたり、会話が大仰だったり表現が古くさかったりして、読みながら苦笑してしまった。悔しくても、本当にギリギリと歯軋りなんかさせちゃダメ(笑)。会話も全体的に説明口調なのが読みづらい。そこらへんが宝島社の仕事だよなぁ。もうちょっと編集さん、チェック入れませんか? 細かいとこツッコミだしたらキリがないよ。デビュー作だからといって容認できる範囲ではない気がする。
一方後半、森崎敬子の暗躍によって、選挙の局面がガラリと変わるあたりなんかは面白かったな。そこらへんをもっとふくらませて、釈然としないエピソードは削って、物語全体のメリハリをもっと効かせれば、もっとぐいぐい読ませる小説になったんじゃないかなぁ。
なんて、何様な感想文になってしまいました。