ケイゾク

6月に入ってから一冊の本も紹介してませんね。ここは読書録ブログではなかったのか。でも今日もドラマ感想です。わたしはこれまで真面目に見た日本のドラマというのが少ないので、暇つぶしに評判の高いドラマというのをまとめて見てみようかな、なんて思いまして。どんだけヒマなんだ。そんなわけで一発目は「ケイゾク」です。

ケイゾク DVDコンプリートBOX

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放送は1999年。わたしは当時大学生。一番ドラマを見てなかった時期です。でも堤幸彦演出でクセのある作品ならきっと気に入るだろうと、見る前から確信してました。そして予想どおり、ほぼ2日間でTVドラマシリーズ、特別編、映画と一気に見てしまいました。


★「堤幸彦」な演出
今見ても楽しめるB級ノリな演出は、今でこそ市民権を得ているけど、当時は相当斬新だったのでは。「ケイゾク」以前の土曜9時「金田一少年」シリーズや、のちにクドカンとタッグを組んだ「池袋ウエストゲートパーク」に通じる、個性的な演出がまず目を引く。


★オチは弱い、けど挑戦的な脚本
このドラマで一番斬新だと思ったのは、脚本だ。ただ弱点も脚本だった。
斬新に感じたのは既存のドラマの常識を壊したこと。8話を機転としてドラマの性質ががらりと変わるのだ。1話から7話の基本は、一話完結のいわゆる普通の刑事ドラマ。ただその間に、真山のトラウマである事件が少しずつ明かされていて、後半への伏線となっている。そして真山が追っている男=朝倉の陰謀に柴田が巻き込まれる8話。9話以降、ストーリーは一気にシリアスに、柴田&真山と朝倉の対決へともつれこむ。ひとつのドラマが途中で別のドラマに急変してしまったようなドライブ感。これはかなりの冒険だし、見ているほうとしても刺激的だった。
ただ結局、朝倉に関する大ネタのオチがオカルトに走ってしまったのがちょっと残念。これをオカルトに逃げずに改良したのが「アンフェア」だったのではないかと思う。


★一番の魅力は個性豊かなキャラクターたち
常人を逸する頭脳を持つキャリアとして操作一科二係に配属されるも、その常識はずれな行動にまわりを翻弄してしまう、変人警部補・柴田。頭が臭いしファッションセンス最悪という、女性らしさからかけ離れたヒロイン像を中谷美紀が演じることで、逆に好感度が高まった。
その柴田の世話役として嫌々ながら捜査に付き合わされるのが、元公安でたたきあげの刑事・真山。渡部篤郎の最高の当たり役だ。仕事は異常なまでにビジネスライクに割り切る一方、妹を自殺に追いつめた朝倉を執拗なまでに追うという、影のある男を好演。ただWikiによれば、当初真山役は三上博史で、朝倉が渡部篤郎の予定であったとのこと。真山=渡部はハマり役だったと思うけど、渡部版朝倉を見てみたかったなとも思う。
その他も1係や2係のメンバーがいい味出している。やっぱ特筆すべきは竜雷太演じる野々村光太郎か。結局、コギャル雅ちゃんと結婚できたのかどうか気になるところだ。


★柴田と真山の関係
ここが意外に視聴者を引っ張るポイント。「Xファイル」しかり「時効警察」しかり、仕事のパートナーになった男女は微妙な距離を保つことこそが、人気を博する秘訣だ。柴田も真山もお互いを恋愛対象としてはみれないと断言している。しかし柴田は無条件で真山を信頼しており、一方の真山は柴田を「妹」的な存在として扱っていて、近づくようで近づかない二人の関係。高まるファンの期待。それゆえ効果的だったあの映画版のラスト……なんでしょうね。


シリーズラストからの続き……心臓停止した柴田は生き延びるも、二係に配属された期間の記憶を失ったまま、八王子の署長に赴任することに。一方死んだはずの朝倉が、ゲームの再開を予告してきた……。
TVシリーズを2時間で再構築したのはさすが。堤ワールドはさらに濃くなり、全体としても上手くまとまった一作となった。新たに二係に配属された京大卒という役で登場した生瀬が、さらに堤色を濃くしている印象。


ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer [DVD]

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ドラマシリーズから始まったこの「ケイゾク」にケリをつけるための映画。
前半はベタベタなミステリ。孤島とか城とか美少女とか消える部屋とかね。そして当然のごとく柴田がその謎を解くわけだが、そこからさきが「ケイゾク」そのものを終わらせるためのドラマとなる。
ま、結局オカルトなんですけど。事件の現場となった島が黄泉の国への入り口だったため、柴田も真山もそれぞれ、忘れることのできない死者たちと対面し、再び深く傷つく。まさに「ケイゾク」のラストにふさわしい、過去に正面から向かうあうシーン。ちょっと冗長に感じたことは否定しないが、どういうかたちにせよ、二人がトラウマを克服する部分は必要だったと思うので、まぁ、これで良かったかなぁと思います。