文学賞メッタ斬り!〈2007年版〉受賞作はありません編(大森望・豊崎由美)
- 作者: 大森望,豊崎由美
- 出版社/メーカー: PARCO出版
- 発売日: 2007/05/10
- メディア: 単行本
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とりあえず<ROUND1>のトークショー、文壇の暴露話と中原昌也のやさぐれっぷりにひたすら笑えます。石平はもっといじってほしいわー。食わず嫌いで今まで読んでなかった中原昌也、遅まきながらすぐにでも読みたくなりました。ていうか、買っただけで読んでない彼の著作が何冊かは家にあるはずなんで、掘り起こしてみようかと。
やっぱ本書の神髄は、<ROUND3>の選考委員メッタ斬り!かな。選評なんて、直木賞・芥川賞で興味のあるときだけ立ち読みする、くらいのものだから。本書で槍玉に挙がっているおかしな選評を読むと、逆にその受賞作が読みたくなる。
はっきりいって、そのなかには、ときに観念や知的好奇心にかられて、現実的なリアリティーに欠けるものもなかったわけではない。
「現実的なリアリティー」……「現実」って……「リアル」って……。
離婚という別離についての、自動販売機の商品補填係りという現代的な仕事の上でのパートナー同士の離婚の感慨の対比が主題となっている。
意味不明。
一番最後の「離婚の感慨の対比が主題となっている」だけは、それだけ読めば理解できる。まず冒頭の「離婚という別離についての」は絶対いらないし、「自動販売機の商品補填係り」イコール「現代的な仕事」としてるのも謎だし、「パートナー同士」という言葉がどこにかかっているのかまったくわからん。けどあまりに意味不明すぎて、これまで興味なくて読まなかった受賞作『八月の路上に捨てる』を読みたくなった。とても言葉だけでは推し量れない都知事のこころを知るためにも。
ほかにも芥川・直木賞の考察(これは当然だけど)や、新人賞の傾向と対策、津本先生さようなら、文学賞事情などなど、小説好きの人なら楽しめるトピックばかり。ぜひ毎年出してほしい。
なによりこんだけ声高に「選評」へ文句つけてくれるのが気持ちいいんだよね。常にこの二人の選評眼が正しいなんて思ってないけど、文学賞への初の「チェック機能」としての役割を果たしてると思う。それで現在の状況に置いては、その役割ってかなり重要なのよ? できれば毎年遠慮なくガンガン突っ込んでほしい。
そんなかんじで楽しめる作品でした。