小説すばる3月号
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/02/17
- メディア: 雑誌
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はてなのキーワードによれば「ガーリー」とは
少女らしい状態や,女性が惹かれるもの全般を俗に言う語。ファッション・アート・その人自身などを通して表現される。1990 年代中盤のアメリカで発祥した考え方。「−スタイル」
〔少女(girl)をもじったもの。蔑称の girlie と区別されることが多い〕
三省堂提供「デイリー 新語辞典」より
らしい。
今までも曖昧な印象しかなかったけど、この説明を読んでも曖昧な感じ。「女性が惹かれるもの全般」って幅広すぎないか。
世代に関わらず女性のなかにある「少女」性が刺激されるもの、というのがわたしのイメージには近いかな。でも内に向かう「乙女」性とはちょっと異なって、もっと外に向けての表現力いっぱい、というお日様の明るさを感じる言葉なんだよな。
という違和感をつらつら並べてしまったのは、<ガーリー〜GIRLIE〜特集>でのメイン特集のタイトルが、「乙女のための短編小説」だからかな。まぁ最近「乙女」という言葉が流行してる気がするので(とくにこの世界では森見登美彦氏のあの作品が話題であることも大きいだろう)、使ってみたい気持ちはわからんでもないけど、「ガーリー」と「乙女」を同じジャンルでくくってしまうあたり、文芸誌のおっさんらしさが前面に出てる気がするのはわたしの気のせいか。
ま、そんなメイン特集では平安寿子、橋本紡、豊島ミホ、森見登美彦、若木美生、日向蓬、水森サトリなどの短編が11作。そのほか、三崎亜紀『となり町戦争』のスピンオフ中編、対談は野中柊×金原瑞人、豊島ミホ×吉川トリコ、乙一×古屋兎丸、スペシャルエッセイに嶽本野ばらなどなど、なかなか魅力的なラインナップ。
森見登美彦の短編はシリーズの第一話らしいし、三崎亜紀のスピンオフも近いうちに単行本になりそうだし、とりあえずは我慢。
「乙女のための短編小説」のなかで読んだのは……
●平安寿子「恋が苦手で……」
ちょっと気まずい過去を持つオトコとの再会……年齢を重ねたからといって笑い話にはしにくいイタイ過去の処理を、さっぱりと描いた一作。このメンツの中では群を抜いて安定感があります。当たり前か。
●橋本紡「九つの、物語 縷紅新草」
この人の作品読むのは初めて。読書家なのにモテモテの兄と、地味なわたしの物語。面白かったです。途中からネタはわかったけど、緊張感のある文章にぐいぐい引き込まれました。この人の他の作品も読みたい。
●豊島ミホ「ぜんぶあげる、なんでもあげる カウントダウンノベルズ第三話」
倖田來未を彷彿とさせるドル箱歌手が主人公。なんですかね、「夢を与える」に対抗したのでしょうか、と疑いたくなるほど、同い年の作家が同じく芸能界で生きる少女を主人公にした作品を発表してます。これはまだ続きがあるんだろうから、感想は保留。
●津村記久子「炎上学級会」
文化祭の出し物を決めるために担任がネットの掲示板を設置したが……。これ面白かったなぁ。ネットと現実のズレというとありきたりな題材に思えるけど、一般論ではなくひとつのクラスの中でのことだから「ズレ」は際立ち、そして現代だからこそ「ズレ」も含めてそういう事例ががライトに扱われる。ただそういう設定や他のエピソードがラストで上手く消化できなかった感も。また携帯がデフォルトな現代を舞台にしながら家にパソコンがない生徒が多いという設定は、違和感を覚える読者は多いのではないかしら。わたしの実家があるあたりも含めた<田舎>な環境を感じる。わたしはそれがわかるからいいけど……。あと人物の登場が唐突なのが気になった。
名前に見覚えがあるなと思ったら、「群像05月号特集〜新人15人短編競作〜」で「花婿のハムラビ法典」という短編を読んでレビューしてました。まだ単行本は出されてないようですね。文句言いながらわたし、なんかこの人の作品すごく好きなんですよね〜、応援して単行本化を待ってます!
●水森サトリ「ルナ」
こないだ読んだ小説すばる新人賞『でかい月だな』の受賞後第一作らしいです。う〜ん……青春のイタさ全開はアリとしても、不思議ちゃんはもう真剣にイタい……な一作でした。とりあえず「月」が大好きなのはよくわかったけど、だったら今後展開しづらそーな生理に絡めないほうが良かったのではないかと。どうなんでしょうか。。。
あとは琴欧州を見て「外国人っぽいね」と感想を漏らした、嶽本野ばらによる初のスモウレビューも面白かった。この人の小説はたくさん読んでるけど、エッセイはほとんど読んだことないので余計興味がわく。ちなみにわたしは相撲部屋に近い職場で働いたことがあるので、ちょんまげ浴衣で相撲体型の若者が、自転車でふらふらしてたりコンビニで立ち読みしてる姿は大分見慣れたけどね。