「貸与権」明文化で貸し漫画ビジネスが拡大

■レンタルビデオ大手:貸しマンガ参入…「貸与権」明文化で
 レンタルビデオチェーンが、相次いでマンガ単行本(コミックス)のレンタル事業に本格参入する。08年3月末までに、最大手の「TSUTAYA(ツタヤ)」は100店、業界2位のゲオは70店に拡大する予定。既に一部店舗で試験導入を始めているが、いずれも取扱店を1年で2〜3倍に増やす計画だ。全国のレンタルビデオ店の4割を占める2社の動きで、マンガを貸し本で読むスタイルが広がる可能性もある。
 ツタヤを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の計画では、最新作を中心に1店当たり3万〜5万冊をそろえ、1冊80円前後(3泊4日)で貸し出す。ビデオがDVDに置き換わったことで空いたスペースを活用し、各店舗が5分の1強の面積をマンガに割り当てる。
 ゲオは平均2万5000冊。1冊80円(2泊3日)で、10冊以上は7泊8日が目安。中小チェーンも追随する見込み。
 貸しマンガ業自体は昔からあるが、著作権との関係があいまいだったこともあり、個人店が中心だった。しかし、著作権法改正で書籍の貸与権が明文化され、作者に払う料金体系や、新作は1カ月後から貸し出すルールが固まったことなどから、大手の動きが加速した。
 書店、古書店や漫画喫茶との競合も予想されるが、「一度読めば十分」「マンガ喫茶に長居したくない」という新しい利用者を掘り起こす可能性もあり、CCCは「マンガが映画化される例も多く、主力のDVDレンタルとの相乗効果も見込める」と期待している。【谷口崇子】

毎日新聞 2007年2月10日 18時30分 (最終更新時間 2月10日 21時23分)

http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/kigyou/news/20070211k0000m020020000c.html

これはいいなぁ。漫画って読んでみたいのがたくさんあるけど、片っ端から買ってると部屋がえらいことになるし(小説だけでえらいことになってるのに)。きちんと作者にお金が払われるということだし。

■書籍レンタル大手が参入――ビジネス展開、環境整う、漫画喫茶は徴収の対象外。
2007/01/25 日本経済新聞 朝刊
 書籍と雑誌の「貸与権」は、二〇〇四年の著作権法改正で明文化された。レコードやCDなどにはそれ以前から認められていたが、大手レンタルビデオ店などが試験的に書籍レンタルを始めていたことに対応した。
 法改正を受けて出版社と作家が、個々の作家らの代わりに使用料徴収などにあたる「出版物貸与権管理センター」を設けた。ただ、レンタル店側がセンター経由で著作権者に払う使用料額を巡り議論が紛糾。当初、著作権者側は定価の二倍、事業者側は定価に関係なく一冊あたり六十円を主張して折り合わなかった。
 結局、使用料は定価が五百五十円未満の本なら二百六十五円、五百五十円以上千円未満の書籍なら四百八十円で決着。事業者は貸し出し用の新刊本購入時に使用料を支払い、センターが出版社経由で著作権者に使用料を払う。
 同センターは約三千人の権利者の約三万五千点の書籍を扱う。今年中にこれを五千人、五万点まで増やす予定だ。書籍には貸与の許諾済みを示す「レンタル本」というシールを張る。
 ただ、同センターの約款では、〇〇年一月一日以前に貸本屋として営業を始め、かつ扱う書籍が一万冊以下の零細事業者は使用料支払いの対象外となっている。
 また、漫画喫茶は使用料徴収の対象外。漫画喫茶の市場規模は書籍レンタル店の十倍ともいわれる。文化庁は「店外への持ち出しを認めない限り著作権法の貸与にはあたらない」(甲野正道著作権課長)としている。

http://www.shopbiz.jp/contents/FC20070201/1885_021.phtml

漫画喫茶が使用料徴収の対象外というのは問題じゃないか。「貸与」にあたらないとしても、なにがしらか出版社や著者に還元すべきなのは当たり前だと思うんだけどなぁ。
地方自治体の図書館はどうなのか。
ちょっと古い記事になるけど

■北海道岩見沢市立図書館で岩波文庫の電子書籍を導入
 市の光ファイバー網使って市民向けに閲覧サービス
北海道岩見沢市は6月上旬にも、市民向けに電子書籍の閲覧サービスを開始する。当初は岩波文庫の109作品を用意し、同市立図書館内に設置されたパソコンで自由に閲覧できるようにする。順次500作品まで拡充するとともに、平凡社東洋文庫についても提供を予定している。
 岩波書店平凡社のほか、イーブックイニシアティブジャパン(EBI)、ハドソンがプロジェクトに参加する。EBIが作品の電子化を担当、ハドソンが書籍サーバーの構築など技術面で協力した。
(中略)
 EBIの鈴木雄介代表取締役社長は、従来の図書館の問題点として書庫スペースや購入冊数の物理的な制限、本の劣化や補修にともなう管理コスト、著作権者にとって利用頻度に応じて著作権料が支払われないという3点を指摘。電子図書館システムは、これらの問題点を解消すると説明する。
(中略)
 岩見沢市では、今回の電子書籍閲覧システムの導入にともなうコストを図書館の図書購入予算からまかなう予定だ。具体的な金額は未定だが、作品数や想定閲覧者数をもとに年額料金を算出されるという。これをEBIが市から徴収し、実際に閲覧された回数に応じて各作品の使用料が出版社や著作権者側に配分されるかたちとなる。
 岩波書店の大塚信一代表取締役社長は今回のプロジェクトについて、サービスの公共性に共感した「損得抜き」の参加であるとコメント。一方、EBI では岩見沢市の導入事例をきっかけに他の自治体からの引き合いがあると見込んでおり、電子図書館システムを事業に発展させたい考えだ。
(2002/5/14)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]

http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2002/0514/iwa.htm

利用頻度に応じて著作権料が発生するけど、それは図書購入予算から捻出するとのこと。でもこのサービスが広がれば(広がってないけど)、財政赤字になることは間違いない。
このニュースについてのコラムから。

今回の岩見沢市立図書館ではクローズドな環境でしか提供していませんから、とりあえずは著作権問題もクリアできるでしょう。むしろ図書館無料貸本屋論に対して、デジタルの有料貸本屋となることで著作者へ還元を果 たすことができるという、図書館側からの一つの解決策であると言うこともできます。
 この点から、電子書籍というより電子図書館の一つのあり方を示すものとして考えるべきでしょう。作品数や想定閲覧者数をもとに年額料金を算出して、EBI が市から徴収し、実際に閲覧された回数に応じて作品使用料が出版社や著作権者側に支払われる仕組みであるといいます。ここで画期的なことは、図書館自体は本の購入ではなく、利用状況で支払を立てるという仕組みであることです。また、イギリスなどで行なわれている貸出し1回につきいくらという形で著作者に支払われる仕組みが、電子書籍に限定されているものの日本で初めて実施されることになるわけです。

http://www.transart.co.jp/ttt/index01.html

「買ってまで読みたくない」「読みたい本を全部買う余裕がない」という気持ちはすごくわかるけど、でも貸出し一冊につきたった何十円でもいいから支払ってもらうほうが良いのではないかと思うなぁ。何百人に読まれるために購入する本と、個人で購入する本の値段が同じというのは、なんとなくしっくりこない。購入費が税金から捻出されているとはいえ、より多くの人の時間を充実させた分だけ、その作品へのペイはあってもいいと思うんだけど。難しい問題なんですかねぇ。