国内小説編

さてついに国内小説編ですが……22冊と中途半端!全然絞りきれてないけど、逆にまだまだ面白い作品はあったような…気がする。

エスケイプ/アブセント(絲山秋子
夜は短し歩けよ乙女森見登美彦
中庭の出来事(恩田陸
均ちゃんの失踪(中島京子
真実真正日記町田康
一瞬の風になれ(佐藤多佳子
風が強く吹いている(三浦しをん
ぼくのメジャースプーン(辻村深月
ボトルネック米澤穂信
てけれっつのぱ(蜂谷涼)
少女七竈と七人の可愛そうな大人桜庭一樹
オートフィクション(金原ひとみ
ケッヘル〈上〉 ケッヘル〈下〉(中山可穂
アイの物語(山本弘
銃とチョコレート(乙一
夜の朝顔豊島ミホ
どうで死ぬ身の一踊り(西村賢太
虹とクロエの物語(星野智幸
ミーナの行進(小川洋子
夜をゆく飛行機(角田光代
風に舞いあがるビニールシート森絵都
キサトア(小路幸也


■エスケイプ/アブセント(絲山秋子)
主人公は、闘争と潜伏の20年から目覚めた「おれ」。あけっぴろげに自由なようで実は不安で自虐めいた「おれ」の語り口が、乾いたコミカルさとシニカルさたっぷりで絲山作品らしさを堪能できる一作。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20061222#p2


■夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦)
天然ボケな「黒髪の乙女」に恋した硬派な「先輩」。さりげない恋の始まりを演出するため、京都を西へ東へ暴走する「先輩」のロマンチック・エンジンは「乙女」に届くか? 『きつねのはなし』も同じくらいにオススメ。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20061220


■中庭の出来事(恩田陸)
オーディションと殺人事件がマーブル模様となって物語を彩る。舞台と現実の境はどこに? すべての物語を飲み込む恩田ワールド炸裂な一作です。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20061129


■均ちゃんの失踪(中島京子)
失踪した均ちゃんと彼をめぐる三人の女の物語。彼の失踪によって生まれた、新たな出会いと喪失感。それが三人の女をちょっとずつ変えていく。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20061110


■真実真正日記(町田康)
「本当のことではないかも知れないが、その日あったこと、その日会った人、自分が見たり聞いたりしたことをただ書いてみたくなったのだ。フィクションに疲れたマイナー作家のささやかな休暇として。」←よういうわ。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20061106#p1


■一瞬の風になれ(佐藤多佳子)
サッカーに見切りをつけ陸上に転向した新二、才能はあるけど練習嫌いな連、二人の高校生スプリンターの成長を描いた傑作スポーツ小説です。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20061026#p1


■風が強く吹いている(三浦しをん)
寄せ集め(&半分素人)陸上部の箱根駅伝への挑戦!箱根駅伝というドラマチックな設定を選んで、でもそれに負けない、力強くて優しい物語がここにある。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060921


■ぼくのメジャースプーン(辻村深月)
ある「事件」により心を閉ざしてしまったふみちゃんのため、ぼくは「力」を使う。犯人への罰の重さは? スリリングな展開はもちろん、細かなエピソードなんかも上手いです。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060906#p2


■ボトルネック(米澤穂信)
ミステリやSFの要素も含んだ、なんとも鋭い斬れ味の哀しい青春小説だ。ラストの衝撃は、今も消化できずにいる。もっとも傷つきやすく、もっとも壊れやすいものが表現された、青春小説の傑作です。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060829


■てけれっつのぱ(蜂谷涼)
<御一新>、のちに明治維新と呼ばれる大きな変局直後の混乱した時代を背景に、必死に生きる人間たちの姿が情感たっぷりに描かれた連作短編集。紋切り型の人情話ではなくて、きちんと裏の裏まで描いてあって、読むものの感情を刺激する。ワンシーンワンシーンが印象的。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060804


■少女七竈と七人の可愛そうな大人(桜庭一樹)
幻想的な風景の真下でうごめく男と女の生の感情を描いた、切なすぎる物語。対比で揺れるこの物語の世界に、ひたすら酔いました。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060703#p3


■オートフィクション(金原ひとみ)
アクの少ない作家が多い時代の中で、このとんがり方はそれだけで価値がある気がする。言葉の選び方もいいし。このセンスは買いたい、と思える作家でした。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060704#p1


■ケッヘル〈上〉 ケッヘル〈下〉(中山可穂)
家族の物語で、青春の物語で、愛の物語で、かつモーツァルトに彩られたミステリアスかつサスペンスフルな物語。中山可穂の新境地です。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060610#p1


■アイの物語(山本弘)
AIたちのあまりにニュートラルな世界観の前に、人間という生き物の非論理的で非倫理的な側面が浮き彫りとなる。でも読んでて楽しいSF大作です。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060605


■銃とチョコレート(乙一)
怪盗ゴディバと名探偵ロイズの闘いは、予想もしない展開に……。ミステリとしてだけでなく少年リンツの成長物語としても楽しめる一作。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060601#p1


■夜の朝顔(豊島ミホ)
小学生センリの6年間の断片。まさに大人のための<あのころ>の物語。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060425


■どうで死ぬ身の一踊り(西村賢太)
藤澤清造という大正期の作家に傾倒した主人公の情けなさ、惨めさが妙にリアルで可笑しい。インパクトと濃さにノックアウト。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060212#p2


■虹とクロエの物語(星野智幸)
サッカーボールを蹴り合うことが何よりも特別な時間だった二人の少女と無人島に一人で暮らす少年。3人の鮮やかな想い出と、その二十年後が静かに描かれる。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060131#p3


■ミーナの行進(小川洋子)
たくさんの幸せとその裏に見え隠れする切ないエピソードがたっぷり詰まった、家族の<欠けることのない>物語。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060423


■夜をゆく飛行機(角田光代)
ゆっくりと変化する家族への切ない思いがあふれる、角田光代の久々の長編。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060722#p2


■風に舞いあがるビニールシート(森絵都)
ベクトルはバラバラながらも「何かに夢中になってしまった」人たちを共通項とした、ほろ苦くも優しい短編集。直木賞受賞作。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060713#p2


■キサトア(小路幸也)
ちょっとしたことをきっかけによそ者扱いする排他的な感情、子供たちが初めて知る島の忌まわしい過去、そういうものをきちんと描きながらも、この物語はとてもあたたかい。
レビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20060818#p2



追記1:今年は青春小説で収穫が多かった。『一瞬の風になれ』と『風が強く吹いている』は陸上をテーマにしたスポーツ小説としてオールタイムベストに入るくらいに素晴らしかった。その後味の悪さで賛否両論な『ボトルネック』も異彩を放っている。青春の痛々しさを鋭く表現した小説としてとても価値があると思うのだけど。一方で青春のイタさ全開の『夜は短し歩けよ乙女』はおかしくてかわいらしくて、きっとだれもが多少のイタさを抱えていたあの時代を愛情たっぷりに描いていていとおしい。


追記2:もうちょっと注目されるといいなぁと思う人たち。まずは中島京子。ビックリするほど上手いのに。とっつきやすい『均ちゃんの失踪』をピックアップしたけど、記憶をめぐる不可思議な連作短編集『TOUR1989』も個性的でオススメ。そして蜂谷涼。というわたしも『てけれっつのぱ』しか読んでないので偉そうなことは言えないけど、ワンシーンワンシーンそれぞれが印象的な連作短編集だった。この広いはてな内でたった三人しかとり上げてないというのが意外。