誘拐の誤差(戸梶圭太)★★★☆

誘拐の誤差

誘拐の誤差

「本格警察小説」だって。何をアホなことを抜かしてるのかと突っ込みたくなるあたりすでにトカジャンキー?

本書の主人公は10歳の男の子……というか幽霊。殺されて遺棄された自分の事件に関わる人を、縦横無尽に観察しちゃう。ついでに幽霊だから(?)人の心まで読めちゃって、アホな犯人、ズレた捜査陣、一気に崩壊する家庭に、冷静なツッコミを入れて。しかし単純そうな事件は、アホすぎる犯人たちのおかしな連鎖によってズレ始める。うん、まさに思い込みが暴走する狂想曲。


後手に回る警察を尻目に、犯人が徐々に本筋からずれていく展開は見事。でも一方で、トカジ流低レベル社会のドタバタもちょっと食傷気味。それは前からそうなんだけど。ただ次こそはなんか新しいことをやってくれるんじゃないかと、毎回期待してガクッときちゃうんだよなぁ。