『ヘンリエッタ』(中山咲)〜第43回文芸賞受賞作〜

文藝 2006年 11月号 [雑誌]

文藝 2006年 11月号 [雑誌]

今月号の『文藝』はもう、綿谷りさの「夢を与える」だけでお腹いっぱいモトは取らせていただきましたという気分ではありましたが、せっかく文藝賞の受賞作も掲載されてることでしょうし、読んでみますかね。
今回の受賞作は二作、「公園」の荻世いをらと「ヘンリエッタ」の中山咲。中山さんは17歳の高校生だそうで。まーそんなことにも驚かなくなりましたが。


というわけで『ヘンリエッタ』から。
ヘンリエッタ」という名の家に三人の女性が共同生活している。家事を請け負っている主人公のまなみ、好きな男を見つけるたびに水槽の魚を増やしていくみーさん、いつも優しくゆったりとした雰囲気の家主・あきえさん。三人の共同生活は判を押したように、ひとつのほころびもなく続いていて……。
んんなるほど。なかなか面白かったです。
なぜこの三人が共同生活してるのか?という謎に引かれて読み進めるにつれ、「ヘンリエッタ」の閉鎖性が浮き彫りになっていく。とともに、まなみが少しずつ「ヘンリエッタ」の外に向かい始めるという、そこらへん上手いなぁと思いました。ただラストはもう少し壊しちゃってもいいのではないかと、思わないでもありませんでしたが。だってみーさんやあきえさんの今後も、やはり気になるので。文体はすごく<音>が意識されていて、川上弘美の作品が好きな人とかにオススメなかんじです。