コルセット(姫野カオルコ)★★★★☆

コルセット

コルセット


昨日は三浦しをんの大傑作にしびれ、今日は久々の姫野カオルコの新刊にひたり、佐藤多佳子青春小説第二弾の衝撃の展開に夢中、明日あたりには京極堂の新刊が出てるかも……? 叫びたい。読書の秋、サイコーーーー!


どうどう。
姫野カオルコ久々の新刊は、ちょっと大人なカオリのする連作短編集だ。上流階級の人たちのちょっといびつな愛が描かれる。
妻と愛人の逢瀬の様子を妻の口から聞いて興奮する不能の夫と親子ほど歳の違う少年と恋に落ちる妻、ゲイの夫の愛人を子供たちの家庭教師として住み込ませる夫婦、まったく違う世界の男への強烈な恋心をくすぶらせる少女、定められた結婚から逃れるようにバリで休息を取る女。
姫野カオルコらしい粘着質なかんじときっぱりとした潔さが同居した、エロティックで上質な物語たち。


「反行カノン」はラストの少年との別れのシーンが、なんともいえないほど、衝撃的に美しい。また妻を他の男にあてがう日に狩猟に出かけ、ウサギ肉を食しながらその逢瀬を聞き出すという、スノビッシュなエロティックさ。たまりません。
フレンチ・カンカン」は閨で夫にいたぶられる青年を、食卓でマナーをしつけながら言葉攻めする妻、というなんとも濃い状況なのだが、逆に妻の心の空虚さがくっきりと浮かび上がる逸品。
「三幕アリア」では、女子高生に価値観を見出さない世界に初めて触れた普通の女子高生が、なんとかその世界を自分にたぐり寄せようとするも…。このラストはいびつさなしで素直に切ない。
「輪舞曲」で描かれるのは、行きずりで一瞬の、でもドラマチックな<旅情>の恋。ねっとりとした東南アジア特有の熱さに似合う。「売らない」「買わない」そんな別れの言葉は、もしそれが自分の人生だったら、一生忘れることはできないだろう。


ここに収められた4つの短編はどれも強烈な個性を放っているのに、一方でひとつの短編集として上手くまとまっているんだよね。

この人の文章が生み出す緊張感は何なんだろう。どんどん研ぎすまされる、姫野ワールドはどこへ向かうんだろう。ファンだから、どこまでも付いて行きますけどね。