大統領のクリスマス・ツリー (講談社文庫)(鷺沢萠)★★★★★

大統領のクリスマス・ツリー (講談社文庫)

大統領のクリスマス・ツリー (講談社文庫)


いやーこれは手放しで絶賛するしかないです。
恋人同士が結婚し、やがて別れる。そんなありきたりなエピソードを、ここまで印象的な物語に描けることができるのかと。驚きました。ていうか、泣きそうになりました。


切ないなぁ。わかるのよ。誰よりも相手のことを知ってるから、誰よりも相手を愛しているからこそ、先回りしてあげられるラストシーン。
わかるけど、あまりに感情移入してしまったので、上手く説明できないかも……。


回想を多分に挟みながらも、現実の時間で描かれるのは夫婦二人の夜の短いドライブ。

これがね、大統領のクリスマス・ツリー。治貴の言葉は香子の耳の奥に今でも残っている。ワシントンで出会い、そこで一緒に暮らし始めた二人。アメリカ人でも難関の司法試験にパスし弁護士事務所でホープとなった治貴。二人の夢は次々と現実となっていく。だがそんな幸福も束の間……。感涙のラストシーン!

見かけだけではなく、充実した夫婦と家族の関係。それを一瞬で揺るがす恋の破壊力。誰も悪くないと思えるのは他人事だからだろう。だからこそ、主人公のラストシーンでの振る舞いは恰好いい。情が移ってるからこそ、自分の思いよりも、相手の願いを叶えてしまうんだよね。わかる。心情的にわかるけどそれをきちんと言葉にした主人公に感服です。


はー今日の芹沢作品二連続は贅沢だった。
本当に良かった。