群像 2006年 10月号 [雑誌]〜その3
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/09/07
- メディア: 雑誌
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なんかマラソンしてる気分になってきた……。
●「梅雨の晴れ間に」(高井有一)
一人暮らしの老人のプチ家出。ゆったりとした時の流れとすがすがしいかんじを受けました。
●「懐石」(高樹のぶ子)
料理研究家として成功した女が、年下の男を誘惑します。ちょっとキモいです。
●「第三回宮沢賢治世界大会に参加して」(高橋源一郎)
タクシーの運転手さんの話が笑える。ていうか、この雑誌を読んでて、初めて(!)笑えました。嬉しい。この人のユーモアのセンスは好きだわー。
●「遠い水、近い水」(高橋たか子)
若くして死を選んだあるフランス人女性について。私小説なのですが、他人の自殺の理由を想像して書くというのは、あまり好きじゃない。
と、ここで集中力がキレました。
タ行の壁は厚かった。敗北。完全な。
ここからさき、藤野千夜まで知らない作家の作品を9編も読みたくない。
だいたいここに収められた短編は、何かみんな暗いのだ。そういうテーマ?
何かうつうつしてくるのでもういいや。
こっからは好きな作家の作品だけ読みます。
●「願い」(藤野千夜)
十年ちょっと前に亡くなった祖母が夢枕に立ち、願い事を3つだけ叶えてくれるという。恋も仕事も失ったばかりの奈緒は、「願い」について考える。
いやー、柔らかくていい物語だ。この46編耐久マラソンで、なんか飢えてましたよ、こういう話に。やっぱこの人の作品は好きだなぁ。
●「エアー」(星野智幸)
みえないヴァギナを持った男と、みえないペニスを持った女の邂逅。
音楽を感じる描写のなかで、カテゴライズできない肉体と精神を持った二人の性交は「奇跡」を見るようなかんじ。
●「重たさ」(舞城王太郎)
久々だなーこの人の小説。
結婚とか家族とか、年齢を重ねるにつれ背負うべきとされる「重たさ」をひたすら避けて生きてきた男の迷い……は必要なかったようです(笑)。ですが舞城王太郎的には意外に真面目な小説です。
●「ホワイトハッピー・ご覧のスポン」(町田康)
タイトル意味不明。コレが最高でした。
薄っぺらなポジティブさを皮肉たっぷりに笑い飛ばす。だって「それぞれがそれぞれであること。/それが一番大事だと思う。」なんて言葉がこの人の書いたものに出てくるわけで、それだけで爆笑です。「みたくないこと」を「なかったこと」にしようとする、人間のズルさがストレートに描かれています。
というわけでコレにて打ち止め。
本当は堀江敏幸も読みたかったのだけど、この人も思いっきり純文学してるので、疲弊した読みモードでは辛そうだとパス。コレまで読んだことないが気にはなってる松浦寿輝やモブ・ノリオ、吉村萬壱なども読むつもりだったけど、町田康の作品があまりに良かったのでそこで終わらせたかった。
そんなわけで良かったのは
「うつくすま ふぐすま」(絲山秋子)
「ひよこトラック」(小川洋子)
「父のボール」(角田光代)
「デリラ」(金原ひとみ)
「姉妹」(川上弘美)
「幻視心母」(桐野夏生)
「魔」(河野多恵子)
「Birthday」(島本理生)
「この街に、妻がいる」(笙野頼子)
「第三回宮沢賢治世界大会に参加して」(高橋源一郎)
「願い」(藤野千夜)
「エアー」(星野智幸)
「重たさ」(舞城王太郎)
「ホワイトハッピー・ご覧のスポン」(町田康)
やっぱり前から好きな作家、というか人気の作家ばかりなんですが。この中でも角田光代、金原ひとみ、川上弘美、高橋源一郎、藤野千夜、星野智幸、町田康あたりが短編としてのキレが良くて、かつユーモアがあってわたし好み。一番はもちろん町田康でしたね。
とにかくこの短編耐久マラソンはほとんどハッピーな話がなくて、もちろん暗くてもいいんだけどそれはそれで楽しませてくれる作品が少なかったように思える。地味でユーモアもない短編を連続で読むとかなり疲れるんです。
でも気に入ったのだけでも14編。その中でもとくに好きなのに絞っても7編。やっぱ1500円は安かった。だって普通のアンソロジーだって気に入るのは半分だものね。この7編が収められたアンソロジーなら2000円出しても惜しくない。ま、耐久マラソンなどに挑戦せずに、最初から好きな作家の作品だけ読んでればもっと気持が良かったでしょうが。でも普段なら読まないタイプの作品も読めて良かったです。