群像 2006年 10月号 [雑誌]〜その2

群像 2006年 10月号 [雑誌]

群像 2006年 10月号 [雑誌]

なんか文芸誌ばっかりですね。

いやーしかし読み応えありますね。ていうか読んでも読んでも終わらない気がしてきました。全部で46編。単行本にしたら何冊分になるんでしょうかねぇ。楽しみにしてる舞城王太郎とか町田康の短編にたどり着ける日はまだ遠そうです……。


●「幻視心母」(桐野夏生
母親が脳梗塞で倒れたことをきっかけに、音信不通だった姉妹が再会する。
桐野夏生らしい作品。そねみやねたみなどのマイナス感情を描かせると上手いですよね。

●「同行者」(黒井千次
この人の作品を読むのは初。雨の日のお葬式にたどりつけない見知らぬ二人。静かで奇妙な物語。

●「魔」(河野多恵子
この人の作品を読むのも初。「魔」に隠された「探しもの」をつくりだす、ホラーチックな物語。味わい深い。

●「誰かがそれを」(佐伯一麦
この人の作品を読むのは初かな? 外から聞こえる奇妙な音に悩まされるもと電気工の作家。私小説風味。

●「簿暮」(坂上弘
この人の作品を読むのも初。道半ばで自殺した実在の作家、金鶴泳にまつわるあれこれ。私小説だと思われます。

●「鉄が好き!」(島田雅彦
島田雅彦読むのは久しぶり。紀元前にまで遡る一族の歴史を次世代に語り継がなくてはならないという一家の長男の物語。本人にしてみたらやっかいな風習だろうけど、祖先のことを知るのはきっと面白いだろうなぁと思いました。ま、とりあえずデータ化しとくのは無難ですねw

●「Birthday」(島本理生
結構インパクトのある展開で楽しめました。『ラブリー・ボーン』(アリス・シーボルド)ぽい。
「それはまるで豪華なバースデーケーキみたいな夕方だった」とかそういう安易で微妙な表現はそろそろ卒業してほしいですが。どんな夕方だよ。

●「この街に、妻がいる」(笙野頼子
私小説+文学論+夢小説+仏教ってかんじでしょうか。
歯切れの良い文章はやはり好みです。

●「燐寸妙」(瀬戸内寂聴
これまた私小説。演出家の久世光彦氏の訃報を聞いてから溢れ出す、彼にまつわるエピソード。とても魅力的な人だったのだなぁと、今さらながら知りました。そしてさすがの瀬戸内寂聴ですから。きれいにまとまっている短編だと思います。


今日読んだのは「私小説」が多かったですねぇ。「私小説」雑誌を読んだあとだし。過去最高に「私小説」を読んだ一日でした。