オール讀物 2006年 09月号 [雑誌]〜創作動議は、薄っぺらな価値観への怒り、です!

オール讀物 2006年 09月号 [雑誌]

オール讀物 2006年 09月号 [雑誌]

直木賞の選評はとくに目新しいものもなく。みなさん受賞作二作については総じて好評価、それ以外の作品に関しては何かしらかのご不満があられるようで。とくに『砂漠』にはわりと手厳しく、この作品で受賞させるわけにはいかないという総意は、裏を返せば伊坂幸太郎という作家へのなみなみならぬ期待とも読める。
受賞作について一人辛口なのは渡辺センセ。『まほろ〜』については「とくに男二人の生活はボーイズ・ラブの延長のつもりか、大人の男の切実さとリアリティーに欠ける」って、ボーイズ・ラブって言葉知ってたんだw。『風に〜』では「平和すぎる日本の姿を見てアフガンに行こうと決心するのでは、作為が見えすぎて小説が軽くなる」と小言をいいながらも、やはりエドとのセックスシーンのチェックも忘れない。さすがです。ただ主人公は「平和すぎる日本の姿を見てアフガンに行こうと決心する」のではないと思われますが。


さて目当ては角田光代×森絵都×三浦しをんの対談。
最近、男同士で映画を観に行くかというアンケートを行なったりしていろいろ考えたのだが、映画に限らず大人になればなるほど、男同士で遊ぶということ自体が少なくなるのかしら? そんなことが気になってたわたしには、この対談はタイムリー。以下、ちょこちょこと抜き出すと。。。

三浦「もう一つ、家族の問題を一応書こうと思っていて、それじゃあいちばん家族になり得ない関係って何だろうと考えたら、たぶん男二人なんじゃないかなと。男女だったら恋愛して結婚して、子供が生まれるかもしれない。女同士もルームシェアとかして、家族のように仲のいい関係ってあると思うんですけど、男性の場合は男二人でいるってあまりないですよね。喫茶店で男二人、という光景を目にすることもすごく少ない。そういうのを考えると、男性二人って、じつはすごく可能性のある関係性のはずなのに、周囲の目や本人たちのプライドによって、自分たち自身をさみしいところに追いやってしまっているんじゃないのかな、という気がしたので、ああいう一種の夢のような関係を描いて、どこにも属することのできない彼らを通して、家族というものを見るのが、効果的かなと思ったんです。」

森「女の場合は異性とわくわくしながらも、女同士の会というのも大事にするじゃないですか。楽しいから、なのになんで男の人ってそっちばっかりいっちゃうんでしょうね。
三浦「ねえ、なんででしょうねえ。」
森「基本的に男同士はライバルみたいなのがどっかにあるんじゃない? 社会的立場が違っちゃうと、子供のころのようには遊べなくなっちゃう。」

この話題については誰か男性作家を一人放り込んでもらって、「実際どーなの!?」と聞いてもらいたかったかも……w。

ちなみにこんな話ばかりじゃありませんよもちろん。それぞれの小説に向かう姿勢などがビシバシ感じられる、ファンにとっては楽しい対談でした。
また三浦しをんはこれとは別に「自伝エッセイ」と名打った、初の(?)仕事に関するエッセイが掲載されていて、いつものノリながらも小説家という仕事について率直に語っていて、読み応えアリ。


そのほかでは……単行本で読む喜びを1mgとも減らしたくないので、文芸誌では小説は読まない主義なのですが、これは単行本になっても絶対買わないので、「池袋西口公園」シリーズの短編を読みました。あざとさと薄っぺらさの加速はとどまることがないようで。デビュー当時は好きだっただけに、失望もとどまるところがない。やっぱりがっくし。