ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺〈2〉 (笑酔亭梅寿謎解噺 (2))(田中啓文)★★★★☆

ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺〈2〉 (笑酔亭梅寿謎解噺 (2))

ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺〈2〉 (笑酔亭梅寿謎解噺 (2))

超お気に入りだった「笑酔亭梅寿謎解噺」の続編が出た!
今月「笑酔亭梅寿謎解噺 1 ハナシがちがう! (集英社文庫)」と改題されて文庫化されていたのは、この続編のためだったのね。基本的に文庫化の際に改題するのはあまり好きではない(よく間違えて買っちゃうから)、これは納得できます。今後も「ハナシ」を共通にしたタイトルで続編を出すつもりであると宣言されたようなもんで、ファンとしては嬉しいのだ。


むりやり弟子入りさせられたにも関わらずいつしか上方落語にハマってしまい、すっかり内弟子のもと不良少年の竜二、改め笑酔亭梅駆(しょうすいていばいく)。師匠の梅寿は相変わらずの酒飲みのやりたい放題で、竜二のどたばたな日々は続いている。そんななか、若手の噺家を競わせる「Oー1」グランプリで予選を突破した竜二は東京の本大会に出場するが、粋な江戸の落語にすっかり惨敗して帰ってくる……。


前作同様、日常系本格ミステリ短編集ではあるのだが、今作はより、梅寿と竜二が巻き込まれる(もしくは巻き起こす)騒動にまつわる人間ドラマに焦点が当てられている。頭角を現しながらも暴走を繰り返す竜二、ケンカっぱやい梅寿の性格ゆえに危機に陥る笑酔亭一門。とくに竜二と一門の未来を左右するラスト三話は、勢いある展開で読ませる。


やっぱりわたしはこのシリーズが好きだ。落語界を舞台にしたこのシリーズは、まさに現代の人情物語なんだもの。日本人はやっぱ人情モノに弱い。とはいえ現代を舞台にしている以上、過剰な人情味はリアリティーに反していてかくも排除されがちではあるけど、落語というエッセンスはなぜかそのハードルを取っ払ってしまう気がする。落語で描かれる江戸時代の人情味は、失われるとともに惜しまれるものだ。だからこそ落語という業界の中で、こんな人情話があってもいい、むしろあってほしいと思わされる。もちろんキャラ造形の上手さや構成の巧みさなど、この著者のウデあってこその話ですけどね。


パワー衰えぬ、むしろ増してる?二作目でした。続編が楽しみでしようがないです。
ちなみにですがTVドラマ「タイガー&ドラゴン」が好きだった人はぜひ読んでみるといいですよー。


ちなみに前作、つまりシリーズ一作目はコチラ↓

笑酔亭梅寿謎解噺 1 ハナシがちがう! (集英社文庫)

笑酔亭梅寿謎解噺 1 ハナシがちがう! (集英社文庫)

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