温室デイズ(瀬尾まいこ)★★★

温室デイズ
温室デイズ
posted with 簡単リンクくん at 2006. 8.21
瀬尾 まいこ著
角川書店 (2006.7)
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窓は割る(基本ですね)。教師に暴力は振るう。学級崩壊どころか学校崩壊に近い、最悪の中学校でのサバイブはどこまでも過酷だ。どうにかまともな教室に戻したいと真正面からクラスメイトたちにぶつかっていじめを受けつみちる、そんな教室の雰囲気からひたすら逃げる優子、自らクラス全体のパシリ役を引き受けることによって教室内での立場を確保する斉藤。三人はそれぞれ自分の居場所を守ろうと奮闘するが……。
う〜む。でもま、いいんじゃないかしら。こんだけハードな設定だもの、理想論な展開でも。おかげで気持よく読めるしね。ただハードな現実を描いているようで、実はファンタジーであることを忘れてはいけないと思う。現実の<みのり>のそばには優子も斉藤も吉川先生もいないのだから。
あの時代を懐かしく思い返せる大人が読むには、いい物語だと思う。だって三人ともまわりに同化することなく、自分というものを信じているもの。誰もがそうでありたかっただろう。でも現実にはまわりに併合するしかなかった人のほうが多いだろう(わたしはそうだった)。この物語の主軸となる三人は実は誰よりも強いのだ。だからこの物語は安易で、読み心地がいい。
虐められる子がこれほど強くあってくれればいいと、それはもちろんそう思う。でも現実にそうじゃないから問題なわけであって。ま、だからあくまでファンタジー。そう読むのが一番です。でもちなみに個人的にはこれまでそりの合わなかった瀬尾作品の中で、一番楽しんで読めました。あまりにぬくぬくしてないのが原因と思われますが。