ざらざら(川上弘美)★★★☆

ざらざら

ざらざら

川上弘美の最新作。揺れ動くおんなの心を切り取った掌小説です。
もしあなたが、ひとりでご飯を食べるのならば、そのご飯どきに読んでほしいように思う。もしくは喫茶店でひとやすみで珈琲を飲んでるとき? もしくは寝る前の数分間にでも。川上弘美の描く上等な恋のピースは、気の向くまま、ゆったりとした気分で読まれるがいいでしょう。
ただ個人的にはちょいと薄味にかんじた。川上弘美らしい素敵な言葉に彩られてはいるが、さらさらと流してしまうような。悪くはないんですけどね。細切れな物語に入り込めなかったのが残念。
どんなジャンルであってもショートショートは、次のページをめくらせるだけの斬れ味がないといけない。今作で振るわれた刀は、ちょいと柔らかかったのではないか、と感じた。悪くはないのよ。川上弘美らしい切り口の掌小説ってことで。ただ残念なことに退屈だった。同じ枚数なら長編が読みたいですね。だってこれは印象に残らないもの。
いやでもじっくりと楽しめる作品ではあります。ゆったりとじんわりと。