赤い指(東野圭吾)★★★★

赤い指

赤い指

直木賞受賞第一作の書き下ろし長編ということで。そうか、『容疑者Xの献身』以来なんですね。
息子が犯したとんでもない犯罪をもみ消そうとする父親、死期の近い伯父の容態を気にかけつつ決して見舞いにこない実の息子とコンビを組むことになった新米刑事。二人の視点から、ある残忍な事件とその後二日間の悪夢が描かれる。
切なくてやりきれない人情系ミステリ。それはひどいけど、でも気持はわからないでもない、最悪の選択を犯してしまった主人公。語り口が上手いのでノンストップで読んでしまうが、正直後味は良くない。でも現代のリアルな日本を舞台としたミステリで、「どういう終わらせ方をするか」ということにこれほどまでに注目させた作品はめずらしいように思う。展開そのものは社会派ミステリでありながら、本格ミステリっぽいラストだったかんじ。ドロドロした事件なだけにどうやっても後味は良くないけどね。でも現実にありそうな事件だけに胸を悪くしながらもぐいぐい引き込まれて、安易すぎると思うもののせめて「情」のあるラストで良かったです。