エバーグリーン(豊島ミホ)★★★☆

エバーグリーン

エバーグリーン

豊島ミホ初の恋愛小説!?……う〜ん、でもどっちかというと青春小説というほうが近いかも。
中学校三年生のときにちょっとしたことをきっかけに急接近した、地味系なシンとアヤコ。シンはミュージシャンに、アヤコは漫画家に、それぞれの夢を叶えて10年後にまたこの場所で会おうと約束をする。そこから物語は十年後の数ヶ月前まで飛ぶ。シンは地元の企業に就職し、付き合ってる彼女とは家族ぐるみの付き合いで結婚も近そう。一方のアヤコは駆け出しながら連載を持つ漫画家になるも、いまだまともな恋愛経験がない。忘れることが出来ないあの<約束>をまえに、二人は焦り始める……。
悪くはないのよ。恥ずかしさを覚えるほどに今さら感ただよう感じは、逆に新鮮で好感度高いし。でもやっぱ、まだまだだよなとも思う。「恋愛小説は今後しばらくは書かない」と自身のブログで書いていた記憶があるが、正解だと思う。この人は5年くらい時間をおかないと、その世代を主人公とした物語を書けない気がする。最近の作品で言えば『檸檬のころ』『夜の朝顔』は学生時代をテーマにしたストレートな作品で完成度が高かった。一方で『陽の子雨の子』は青春期の自意識の闘いを内包していて、ごつごつした感触はあったものの、どこかファンタジックな展開と混ざり合って結果的にいい作品になっていた気がする。
この作品はちょっと照れる。もちろん出来合いの少女漫画ほどに安易な展開ではないけれど、でもちょっと、妄想恋愛物語っぽい印象が拭えない。恋愛小説としてはちょっと幼いイメージ。
でも全然、心配はしてない。この人は人生の経験値が上がることによって、熟成した小説を書ける作家だし。長い目で追いかけますよ!