145gの孤独(伊岡瞬)★★★☆

145gの孤独

145gの孤独

『いつか、虹の向こうへ』で第25回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー、本書が受賞第一作となる作家さんらしいです。わたしはもちろんこの人の作品を読むのは初めてです。
ぶっちゃけ、まったく期待してなかった。昔ほどミステリを読まなくなったし、●●賞受賞作!とかも意外性ない作品が多くてうんざりしてたし(江戸川乱歩賞とか特にね)。この作品もタイトルからしてあんま興味引かれないし暗そうだしどうなのよと思いつつ、久々に新鮮な国産ミステリが読みたくなってチャレンジしたのだが…嬉しい予想外で、なかなか読み応えありました。
主人公はある試合中の事件をきっかけにバランスを崩し、現役を引退したもとプロ野球投手・修介。ある人物の誘いにより、同じくもと選手である真佐夫とその妹・晴香の三人で、便利屋を営む。連作短編集形式で、それぞれはいわゆる正当な謎解きではなく、関わった人たちが何かを起こす前に「止めたほうがいい」と忠告して事件発生を防いでしまうという、後味のいいような悪いようなかんじではある。それに主人公と西野兄妹のやり取りにも微妙な違和感。ん?なんか変だなと思いつつ読み進めれば意外なラストが待っている。二重のトリックが、物語を深くしてますね。
加えてジョークの効いた会話は重くなりがちなストーリーの、ほんの息抜き的な役割を果たしていると思う。そこらへんは誰にインスパイアされたにせよ、伊坂幸太郎っぽいな、と思うのは無理ないわけではありますが。心理描写と実際の会話のテンションが上手く重なってなかった気がしないではないけど、いいスパイスにはなっていたと思う。
ま、とにかくラストに向けてぐいぐい盛り上がっていく展開で、楽しめました。