十五少年漂流記 (新潮文庫)(ヴェルヌ)

十五少年漂流記 (新潮文庫)

十五少年漂流記 (新潮文庫)

そっからかよ!ってくらいに超有名な作品からスタートです。いやでもこれはね、もちろん小学生の時から存在は知っていたものの、どうも興味が湧かなかった。だってタイトルだけで内容わかっちゃうんだもん。十五人の少年が漂流していろいろあるけど最後はちゃんとお家に帰れるんでしょ?みたいな。しかも全員が少年というのもいただけない。少女は少女が主人公の物語を好みますからね。
というわけで元少女が読んでみました。うん、なかなか面白かった。テンポがいいと思う。嵐の中で転覆しそうになる冒頭から始まって、流れ着いた無人島の探索、住処を落ち着けるも少年たちの間で派閥争いが起こり一度は分裂、しかし島に新たな漂流者(大人の悪人)がやって来てからは全員がひとつにまとまり油断出来ない日々を過ごす。緊張感のあるシーンばかり描いてあるので、ぐいぐい読めるわけ。しかしこの少年たちは二年も無人島にいたのか! 読む前のイメージでは2ヶ月くらいかと思ってた。ちなみに読んでも2ヶ月くらいだったかなと思うくらいに、何もない普通の日々は省略されている。
しかしやっぱ子供向けだなと思う。何でもかんでも上手く行き過ぎだ。だって最年長でも14歳とかですよ? なのに銃の扱いは上手いし、知識も深く広く、オールマイティなのだ。ジャガーに勝ったりするしね。油とか砂糖の作り方まで知ってるし。極めつけは疑いもしない<正>と<悪>の二元論だ。まぁ子供向けですからね。桃太郎に文句付けることと同じだけど。あと、15人のうち1人の少年だけが黒人で使用人なのだが、もうそれはそういう時代なんだろうなと思う。
というわけで思ったよりは楽しめました。二年間の無人島生活のダイジェストですからね。でももし実際に少年少女に本を薦めるのならば『銃とチョコレート』を間違いなく選んでしまうと思う、わたしの心もやっぱ黒いですか? でもね、グイグイ読めはするものの、あまりに真面目で理想的すぎて、今の時代にはそぐわない作品であるようにも思うのだ。子供時代こそ、トラウマになるくらいに印象的な物語を読んでほしいと思った。