隠し部屋を査察して (創元推理文庫)(エリック・マコーマック)★★★★★
- 作者: エリック・マコーマック,増田まもる
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/05/20
- メディア: 文庫
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7月7日、日曜日の朝。カナダのある町に突然、幅100メートル、深さ30メートルの溝が出現、時速1600キロで西に向かいはじめた。触れるものすべてを消滅させながら……。世界じゅうを混乱に陥れる奇妙な現象「刈り跡」、不可解な死の真相を追ううちに迷宮に踏み込んでいく警部「窓辺のエックハート」、全体主義国家の支配のもと、想像力の罪を犯し幽閉された人々の、それぞれの「罪」を描く表題作など、謎と奇想に満ちた20の物語を収録。序文=エリック・マコーマック/解説=柴田元幸(東京創元社HPより)
どれもこれも奇妙な感触。ざらざらしてるようでしっくりくるような。わからないようでわかるような。20もの短編が収められているというのに、そのどれもが強烈な個性を放っていて、感想を書くにも手に負えないというのが正直な感想だったりする。再読して一編ずつの感想を書こうかな。そのくらい、濃くて面白いんです。
最後に訳者(柴田元幸氏)によるあとがきからちょっと引用ー
北米で書かれた小説評などを見ていると、どうも北米では日本に較べて、誰もが経験していること、感じていることを的確に言葉にした小説がどちらかといえば尊ばれ、想像力の個性的な偏り、歪みを身上とする作家は、いまひとつ評価が低いような気がする。逆にいえば、そういう作家は、往々にして日本の方がその真価をわかってくれる読者が多く、紹介する側としては大変紹介のしがいがある。
海外の文壇事情なんてまったくわからないけど、そこに精通した訳者が言うからにはそうなんでしょうね。でもちょっと意外。こんな個性的で面白い作品が評価されない? 紹介はしてても売れないってことなのかな? ま、大衆受けする作品でないことは間違いないからね。日本でも評価はされてもそんなには売れないタイプの作品だろうし。でもいいんだよ。誰にでも受ける作品がいい作品ではないってことは周知の事実だし。一読者としてはこれを読めたことを、出版社と訳者にただひたすら感謝したいです。