虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫SF)(アルフレッド・ベスター)★★★★★

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫SF)

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫SF)

SFマガジン2006年のオールタイム・ベストで第5位の作品。個人的には初ベスター。

「きさまはおれを見すてたな」ゆっくりとこみあげてくる激怒をこめて彼はいった。「おれを見すてて犬のようにくたばらせようとするんだな。おれをこのまま見殺しにするのだ。ヴォーガ……ヴォーガ・T・一三三九号。いいか。おれはここを出てやるぞ。きさまについて行くぞ。ヴォーガ。きさまを見つけ出してやる。この仇をとってやるぞ。滅ぼしてやる。殺してやるぞ。ヴォーガ。殺してズタズタにしてやる」

宇宙空間でたっだひとり遭難していたガリヴァー・フォイルは、半年ぶりに接近した宇宙船に救助を求めるも、あっさりと無視されて、復讐の鬼となる。すべては復讐を果たすため、人を裏切り、体と頭脳を鍛え、宇宙中を駆け巡る……。
面白かった!最初からとんでもないスリリングさで、ぐいぐいラストまで引っ張られてきたかんじだ。ジョウント効果と呼ばれるテレポーテーションの技術が効果的に使われてて、シーンがくるくると変わるのも、読んでいて飽きることない一因かもしれない。主人公の精神の破綻が克明に描かれるラストも、ただの虎が<考える虎>になってしまったゆえだと思うと、ぴったりとくるラストだった。
本作が発表されたのはなんと1956年! 面白い小説はやっぱ古びないですね。