ミス・ジャッジ(堂場瞬一)★★★★☆

ミス・ジャッジ

ミス・ジャッジ

この人の作品読むのは初めて。
舞台はメジャーリーグ。日本のプロ野球からアメリカ・レッドソックスに移籍した日本人ピッチャー・橘は、日本で行なわれたヤンキースとの開幕戦で、意外な人物と出会う。それは高校・大学通しての先輩で、肩を壊した天才ピッチャー・竹本。行方知れずだった彼はアメリカで修行を積み、日本人初のメジャーリーグの審判となっていたのだ。十年前の確執を思い出し、不安を覚える橘だったが……。

おぉ…面白いじゃない! 
原因がわからぬままマウンドでの違和感を払拭できず、結果的にチームメイトとの空気も悪くしてしまう橘。なぜ自分が…という気持ちを捨てきれずに、強気なジャッジを繰り返し、批判を浴びる竹本。再会の<ミス・ジャッジ>が二人の男を苦しめる、その展開がたまらない。それに加え、圧倒的なリアリティーと丁寧な人物描写、隅々まで手抜きのないエピソードが満載で、一気読みしてしまいましたよ。ちょっと重い内容ではあるのだけど、プレーオフに向けてレッドソックスがまとまっていくあたりは読んでいて楽しいし、試合中の描写も緊張感溢れてて引き込まれる。

でもやっぱこの小説の面白いのは、普通のスポーツ小説では黒子な存在の審判を、主人公のひとりにしてることだろうなと思う。しかも自我が強く、審判の立場を<権力>と考えるタイプ。それでも彼をたんなる悪役に仕立てないあたりがいい。竹本の心に根ざす深い闇、そして橘のしたたかさがきっちり描かれてるからこそ、この物語は読み応えがある。

他の作品もぜひぜひ読んでみたいなと思いました。

※ただひとつ疑問。時効って被疑者が国外に出た時点で停止されるんじゃなかったっけ? ストーリーに支障を加えるものではないからいいけど、それは一般常識に近いものじゃないですかね?