そろそろくる(中島たい子/集英社)★★

そろそろくる

そろそろくる

この人の作品を読むのは初めて。『漢方小説』がちょっと話題になってましたね。

三十歳を過ぎたイラストレーターの私。仕事もちょっとうまくいかないが、「そろそろくる」ころ、むきかけのゆで玉子を流しに叩きつけたり、呼吸困難におちいりながら泣きじゃくったり、嗚咽しながら冷蔵庫を開けたり閉めたり…。ひょんなことから彼になった友人の弟と、この不快さの原因を調べながら折り合っていく。

細かな描写がリアルで、文章も上手い。小学校の時のエピソードもいいし。
でもね、だから何? という読後感。話はひたすら主人公がPMS(生理の前に身体や精神が不安定になる症状)に向かいあうことに終始してるんだもの。個人的すぎて共感できない。この小説は何を伝えたいの? まさか「いつもと違う時は、誰にでもある」という一文じゃないだろうね。いやいやいや、そんな馬鹿な。
さらさらと読めるんだけど、恐ろしいほどに何も残らない。あ、PMSという症状があるということが知識として残ったけど。
う〜ん。身体に関する悩みはパーソナルすぎて小説のテーマにするにはむずかしいんじゃないだろうか。心の悩みなら共感できる部分は多いけどね。自分も経験したことじゃないと、共感は出来ないからな。