ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー(北森鴻)★★★★
- 作者: 北森鴻
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/04/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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知る人ぞ知る裏(マイナー)な名刹・大悲閣千光寺に、今日も珍妙な事件が持ち込まれる。元裏世界の住人にして寺男の有馬次郎とマイナー新聞の自称「エース記者」折原けい、自称「裏京都案内人」のスチャラカ作家・ムンちゃんが、難事件の謎を追う!? 誰も知らないミステリアス京都と、古都ならではの謎解きの妙味、たっぷりとご堪能ください。
ムンちゃんのあまりのお馬鹿ぶりゆえか、軽快な印象の連作ミステリ。主人公・次郎と、同じく元裏世界の住人で現在はバーテンダーであるカズさんのコンビの存在が、とても心強くて安心して読めるというのもあるし。
でもただの安易な連作ミステリとは一線を画するのは、そんなおなじみキャラの心のぶれがしっかり描かれている点だろう。心のどこかで<裏>との関わりを求める次郎とカズさん、部数をのばしたいがために一線を越えてしまう折原…。漫才のような会話に彩られてテンポいいミステリなのに、そこで終わらせないところが、さすがです。
そしてもうひとつ。北森鴻といえば…そう、おいしそうな料理の数々。
京都が舞台とあって季節感たっぷりな料理が次々と出てくる。飯蛸と里芋の炊き合わせ、筍の沢煮椀、河豚のぶぶ漬け、湯葉巻き、土瓶蒸し、松茸のはりはり鍋、バルサミコの代わりにポン酢を使った白子のバターソテー。たまらん。たまらんぞ。
三軒茶屋の<香菜里屋>シリーズでは創作料理が多い(こちらもめちゃめちゃ美味しそう)が、こちらは寿司割烹のお店が行きつけなのでわりとスタンダード。でも今すぐにでも食べたくて新幹線乗っちゃいたいほどなのだ。今なら若竹煮や春野菜の天ぷらとか…?