犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)(米澤穂信)★★★★★

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

<ライトな本格ミステリ×青春小説>がこれまでの米澤ワールドだとするなら、これはたしかに新境地。

何か自営業を始めようと決めたとき、最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。そこで調査事務所を開いた。この事務所“紺屋S&R”が想定している業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。
それなのに、開業した途端舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして―いったいこの事件の全体像は?
犬捜し専門(希望)、二十五歳の私立探偵・紺屋、最初の事件。『さよなら妖精』で賞賛を浴びた著者が新境地に挑んだ青春私立探偵小説。

これが面白いミステリなんですよ。しかもわたし好みな。やっぱラストのどんでん返しがないとね、ミステリ読んだ気にならないもの。

話の進め方も面白かった。新米探偵・紺屋と、押しかけ助手・ハンベーの二人が、物語の視点になる。紺屋が失踪人探しを、ハンベーが古文書の解読を、それぞれ担当する。それぞれまったく別行動なので気付くことがなかったが、二つの事件を結ぶ糸は、かなり早い段階で読者には知らされているのである。三枚目キャラなハンベーがもうちょっと鋭かったら、紺屋がハンベーに任せきりにしなかったら…と思わずにはいれないが、やきもきしながらも、読者としては探偵より半歩先進んだ状態で読み進めるのが、なんとも楽しいのだ。ただ二つの事件の接点を知ってたとしても、事件の全容はまったくわからないが。そしてラストに向けて事件の全貌がほぼ明るみに出たとき、同時にその接点を知った紺屋は、犯人の<本当の狙い>に気付いてしまう……。

キャラも立ってますね。主人公はちと暗いが探偵としての才能は十分、助手のハンペーのお調子者ぶりもいいし、事件解決に一役買う紺屋のチャット仲間<GEN>の正体も気になるし、夫婦で喫茶店を営む紺屋の妹・梓もいざというときに頼りになるし。シリーズ化を念頭に入れたキャラ作りですね。

そしてタイトル含め、ツッコミ系笑いのセンスもかなり好み。わたしも好きな荻原浩の小説のタイトルもネタにされてるし。

とにもかくにも、ストーリー、キャラ、言葉のセンス、すべてがツボにはいりました。これ以上は何もいらないです。はやくこのシリーズの次作が読みたい!


で、米澤作品を怒濤の勢いで読んできたけど、ひとまずおあずけ。<古典部>シリーズがあと二作未読だけど、行きつけの本屋にないんだもの……。でも今月中には何とか読みたい。