漫画特集〜「KINO VOL.1」と「Invitation 2006年5月号」

どちらも目玉は浦沢直樹。まぁ今は浦沢直樹ですよね。

KINO Vol.1

KINO Vol.1

こちらは創刊号。京都精華大学情報館というところが編集・発行。マンガ学部のある大学のようですね。各出版社の協力を受けてますが、広告はゼロです。
これがね〜濃い! 浦沢直樹とプロデューサーの長崎氏の対談に始まり、『NANA』を育てた編集長のインタビュー、さらには二ノ宮知子羽海野チカ山本英夫相原コージ三田紀房ら人気作家のロングインタビュー、合間合間には読み応えのあるメガヒット考察のコラム、そして圧巻は1980年代以降の数あるヒット作の紹介だ。
この創刊号のテーマは、マンガにおける「メガヒットの法則」。
売れてりゃいいってもんじゃない、という人も多いと思うけど、わたしはやっぱ売れてるマンガは面白いと思う(好みに合う合わないというのは別として)。というのも日本人は基本的にマンガ偏差値が高くて、みんなそこそこ目が肥えてる。特に今はマンガを読む人の年齢幅が広い。わたしが子供の頃はまだマンガは子供が読むものというイメージがあって、親が『ドラゴンボール』を読むなんてあり得ない気がしてたけど、今は子供よりも『ワンピース』の続きを楽しみにしてる親がたくさんいるんじゃないかしら。そんななかで出るヒット作が、レベルの低い作品であるはずがない。
じゃあヒット作となる要因は一体なんなのか? 作者個人の才能は当然必要であるとして、それ以外にスポットを当てたのがこの雑誌のテーマだ。黒子である編集者の戦略、読み手の求めるものの変化、など普段あまり意識されてない部分にスポットをあてた特集で、これがとても興味深い。
あと80年代以降のヒットマンガの紹介も、2000年以降で30作+1990年から2000年までで40作+1980年から1990年までで30作の計100作で、なんと見開きに3作という贅沢なスペースを使って、熱い書評とヒットに至る考察が載せられてる。知ってる作品ばかりなので、これまた読むのが楽しい。なぜあの名作が入ってないのだぁ!…というのは読む人それぞれにあるかもしれないけど、売り上げを基本に選んであるのだと思う。
ま、そんなこんなで読み応えたっぷりな一冊でした。次号の発売は7月、テーマはガンダムだそう。ガンダムは全然興味ないけど多分買うと思います。なんとか続けていってほしい雑誌です。



Invitation (インビテーション) 2006年 05月号 [雑誌]

Invitation (インビテーション) 2006年 05月号 [雑誌]

久々に手に取ってじっくり読んで、ちょっと驚きました。こんな雑誌だったっけ? 創刊の頃は何冊か買って読んだけど、それ以降はあまり気にしてなかった。結構センスいいカルチャー雑誌だったのね。
メインの特集は「マンガという仕事」。トップ扱いの浦沢直樹×宇多田ヒカルの対談はあまり面白くないけど、それ以外はなかなか読み応えがある。
<「7つの名前を持つ男」樹林伸とは誰だ?>というページを読んで驚いたんだけど、「金田一少年」「サイコメトラーEIJI」「シュート!」「神の雫」「GTO」「クニミツの政」の原作者って同じ人だったのか! ヒット率高すぎだろう。
このほか映画版「デスノート」の最新情報や、舞城王太郎の「リアルモーニングコーヒー」の誌上プレゼン、アメリカ版『SHONEN JUNP』創立の話から、「アフロサムライ」まで、興味深く、INなネタが多い。
同じくマンガをテーマにしながら「KINO」は総括的にヒット作を掘り下げ、こちらは最前線かつコアなネタで攻めてくるかんじで、全然かぶってなくてどちらも面白かった。

この「Invitation」の書評のページでは、真ん中にどどんとジーン・ウルフの『デス博士〜』が紹介されてて、なんてセンスのいい雑誌なんだ! と感激したが、よく見るとそのライターは豊崎由美でさもありなんというかんじでした。絲山秋子のインタビューもありますよ。ファンは年配の男の人が多いらしいです。