陽の子雨の子(豊島ミホ/講談社)★★★★☆

陽の子雨の子
豊島ミホの最新刊です。

私立の男子中学に通う夕陽、
二十四にしては幼く見える雪枝、
十五で雪枝に拾われて四年になる聡。
思いがけない夏が、いま始まる。
初めて夕陽が雪枝の家を訪ねる日、
押し入れの中には、後ろ手に縛られた聡がいた。
不安と希望の間で揺れる、青春の物語。


やっぱ豊島ミホはいい。と再認識できた作品だった。
夕陽のキャラはあり得ないとか、視点が変わる際に時間軸のぶれが気になるとか、荒削りな部分はいっぱいある。でもそんなことはいいのだ。
この作品で描かれるのは、青春期における自意識との闘いだ。闘いに疲れては逃げ出し、でもいつしかどうしようもなくまたあがき出す。家族にも友達にも絶対に知られたくない、自分の中でも最高に格好わるい部分。そこをここまでストレートにしかも豪速球で投げられちゃうと、読み手としてはぐぅの音も出ませんよ。


この人は本当に年齢とともに成長してる作家だと思う。それゆえに作品にもいい意味でライブ感があるんだよね。小器用さなんていらないから、これからもどんどんこんな作品を出してほしい。今後も期待大。