俺が近所の公園でリフティングしていたら(矢田容生/小学館)

俺が近所の公園でリフティングしていたら
もとは2ちゃんねるのどっかの板に書かれた小説を、大幅に加筆修正したものらしい。小学館がやりそうなことではある。
主人公の樋口は埼玉県の高校のサッカー部に所属、隠れた才能を持つが全国区では無名の選手だ。その樋口が公園で一人リフティングをしていると、二人組の女の子が鮮やかに樋口からボールを奪った。取り返そうとするが最後までボールに触れられないないまま、二人組はどこかへ行ってしまい…。翌日クラスで紹介された転校生を見て樋口は驚く。それはあの二人組の片割れだったのだ。アメリカと日本のハーフ、名前はモニカ。彼女はその日から樋口たちと同じく男子サッカー部でプレイすることになる。試合に出ることはできないがその才能はチーム随一。ワールドクラスのモニカの才能を間近で感じることで、樋口はその才能を開花させていく…。


悪くはない。文章に勢いはあるし、試合中の描写なんて素晴らしいと思う。
ただ小説としてはどうなんですかね。
まずこれ、二次創作みたいなもんじゃないかしら。いや、現実は創作じゃないから、正しい言葉の使い方ではないけど。だってジーコや川内キャプテンはじめ、現実の代表の選手たちが出てくるんだよ。ちらっと出てくるとかじゃなくて、樋口と一緒にプレイしたり会話したりしてるんだよ。ていうかこの主人公がジーコジャパンの救世主になっちゃうんだよ。別に現実の人物を使っちゃいけないってわけじゃないけどさぁ。う〜ん。
それからもうひとつ。安易に「死」を使うな、といいたい。そりゃ「タッチ」ではカッちゃんが死にますよ。「シュート!」では久保さんが死にますよ。あぁ、でもそのノリなのか。全体的に。
「小説としてどうなのか」なんて考えちゃいけない気がして来た。そうだそうだ。余計なことを考えずに楽しむ読みものなんだな。