狐と踊れ (ハヤカワ文庫 JA 142)(神林長平/ハヤカワ文庫)★★★★

狐と踊れ (ハヤカワ文庫 JA 142)
id:seiitiさんのオススメに従い、デビュー作を含めた著者初の短編集にトライ。
いい作品はどれだけ時間が経っても古びないもんなんですね。だってこの文庫出たの、1981年ですよ? わたし3歳だし! 
ここに収められた六つの短編は、結構アクが強い。SF度が高いわけではないんだけど、荒々しい個性が際立つ作品だと思う。ひとつの小説としてはどうかと思うものもあるんだけど、ハリケーンのような勢いがすべてを上まわっている、そんな印象が残る。
どれもいいのだけど、やっぱ一番いいのは表題作かなぁ。なんと人間の胎内から<胃>が逃げ出してしまう、という設定。それを抑える唯一の薬<5U>をめぐる格差社会をもって、人間そのものを丸裸にしてしまう傑作。
解説で「SFはまったく門外漢である」というデビュー当時の著者の言葉が紹介されてるけど、まぁそうなんだろうな、と思わせる作品ではある。作品自体が稚拙であるということではなくて、非常に型破り。思いつくままに書いてるのではないかとすら思わせる。
ますます興味深い。作品数が多いので一気には読めないけど、ちょこちょこでも全部読みたいなと思った。