Sweet Blue Age(角川書店)★★★

Sweet Blue Age
有川浩角田光代坂木司桜庭一樹、日向蓬、三羽省吾森見登美彦…どうですかこの勇気あるラインナップ! 何気に角田光代を滑り込ませてるのがちょっと笑えます。ま、わたしは有川浩桜庭一樹だけで一応買ってたとは思いますけど。


とりあえずの衝撃は有川浩の短編「クジラの夜」ですよ。『海の底』が好きだった人は必読です! なにせあの小説のスピンオフですから!…と意気込んで紹介するものの、実は私自身は読んでるとき途中までまったく気付かなかったんですけどね……。どこかで聞いた名前だと思いつつふつうに恋愛小説としてさくさく読んでたら、え? 横須賀で大きな事故? 潜水艦『きりしお』!? えぇーー!!ってかんじですよ……まったく自分の記憶力のなさが恨めしい。で、そうなるともう、ひとつの短編としてどうかとかそういう問題じゃないから。この人の小説はキャラが魅力的でついつい思い入れあるから、『海の底』を読んでない人がこの短編を読んでどう思うか、なんてことに頭回りませんから、えぇ。ちなみに読み終わった人は『海の底』P443へどうぞ。ほんの少しですが、話がつながっております。


で、ちょっと落ち着いて他の作品。
角田光代「あの八月の、」は上手いですよもちろん。大学卒業しておよそ十年後、サークルの部室に夜中忍び込んで、当時撮影した8ミリフィルムを観る二人ー弥生子と夏紀。色恋沙汰に真剣だった当時の自分たちが、古いフィルムをきっかけに、映されたもの、そして映されなかったものが、二人の胸に堰を切ったかのように流れ込む。笑い飛ばすほどじゃないけど、やっと冷静に見つめることが出来る、その距離感が絶妙でぐっときました。
期待の桜庭一樹「辻斬りのように」はまあまあ。文章のセンスはやっぱ好きだけどね。これが初めて読む作家だったんだけど、森見登美彦夜は短し歩けよ乙女」はクセがあって印象的だった。長編も読んでみたい。三羽省吾ニートニートニート」はそのままずばりニート×3の首都高珍道中。この人もやっぱ上手いなと思った。他二編「涙の匂い」「ホテルジューシー」は悪くはないけど、ちょっともたっとした印象。


そんなかんじのアンソロジーでした。