リンさんの小さな子(フィリップ・クローデル/高橋啓・訳/みすず書房)★★★★★

リンさんの小さな子
戦争によって故郷を追われ難民となった老人・リンさん。彼の腕の中にはいつも、生まれて間もない赤ん坊の姿があった。この赤ん坊を守る。それだけのためにリンさんは、知り合いもいない、言葉も通じない異国で懸命に生きようとする。そんなリンさんにもうひとつ心の支えが出来た。それは散歩の途中で一休みするベンチでいつも出会う、太った男との小さな友情だった。言葉は通じないながらも居心地のいい、その関係を二人は楽しんでいたのだが……。


かなしいよ。リンさんの謙虚さが、リンさんの必死さがかなしい。追い打ちをかけるかのようなラストもかなしい。でもそれと同じくらい、この物語は力強い。悪夢のような絶望の中で、守るべきもののため、友のためなら、人間はこんなにも強く生きることが出来るということを、リンさんの人生が教えてくれる。だからこの小説には希望があふれている。


この小説は強烈に強烈にオススメしたい。