クローズド・ノート(雫井修介/角川書店)★☆

クローズド・ノート
この人の作品はこれまで全部読んでるんだよね。『犯人に告ぐ』を頂点として、なかなか読み応えのあるミステリを書く人だ。だけどこれ恋愛小説らしいし、帯の「携帯サイトでの連載時から感動の声が続々!」という文句が、また不安をあおる…。

結論から言いましょう。危惧してたほどにはひどくない。でもやっぱ薄味。

主人公はなんだか主体性のない大学生・香恵。楽しみはバイト先の文房具屋に時折訪れてくるイラストレーターの石飛さんに会うこと、そして前の住人が置き忘れた日記を読むことだ。前の住人は<伊吹先生>という若い小学校の教師だったようで、彼女の日記を読むにつれ香恵は彼女の性格や誠実な仕事ぶりに憧れ、また<伊吹先生>の<隆>への恋心に励まされて、石飛さんとの距離を縮めるべく勇気を奮い起こす。日記を通した他人の人生に支えられ、香恵は成長していくが、ラストでは<伊吹先生>と自分の思わぬ関係性を知ることになる…。

全体的に細かいエピソードやキャラクター設定が陳腐なんだよね。とくにキャラクターはキビシいなぁ。だいたい主体性がなくて天然系の主人公っていうのもどうかと思うけど(男にはそれがいいのか!?)、彼女が留学したとたん彼女の親友にモーションかけてくる男とか(ごめん自分で言っといてなんだけど<モーションかける>って死語ですね…)、新進イラストレーターを我がもの扱いして「デキル女」オーラまき散らす広告代理店の女とかさぁ…。

著者あとがきによれば、数年まえに亡くなった著者の実姉の遺品から着想を得て書かれた物語のよう。そのお姉さんが教員で、遺品にあった子供たちからの手紙や、不登校児童の母親と交わした連絡帳などを参考資料に、お姉さん自身が残した文章についてはそのまま、あるいは加筆した上で作中に使用したらしい。

だったらなおのことひとつの小説としてもっとブラッシュアップしろよ…なんて思うわたしは悪人か?
次作は『犯人に告ぐ』を超える重厚なミステリ期待してまっす!!


P.S.
それにしても似てません? 『黄色い目の魚』とこの作品の装丁…。
クローズド・ノート 黄色い目の魚
と思ってネットで調べてみたら(『黄色い〜』が今手元になかったので)、同じ人が装画を担当されてますね。牧野千穂さんという方です。どうなんですかね? 別に私はいいですけどね。えぇ。