正直じゃいけん(町田康/角川春樹事務所)★★★★

正直じゃいけん
町田康の最新随筆集。日本経済新聞週刊朝日の連載を中心に、文庫の解説やその他諸々。装丁が素晴らしい。そのふざけた感じが、中身と合ってます。
タイトルの「正直じゃいけん」というのは「正直じゃ、いけん」ということかと思ってたけど、巻末のあとがきによると、勝った方が負けになるという「じゃんけん」のことらしい。大阪ローカル?
この人のエッセイを読むといつも思うのだけど、文章内における<妄想>の割合が高いよね。こういう連載エッセイだと、多かれ少なかれ客観的な視点というものが文章に含まれると思うのだけど、町田康の文章にはそれが見当たらない。あくまで自分の脳内産物だけで勝負してきてるかんじだ。それでいて笑わせてくれるのだから、まさに職人芸ってやつでしょうか。数が多いのでどれもこれも面白いというわけではないが、総じて平均点は高く、うち何割かは何度読んでも笑ってしまう。言葉へのこだわりもかんじられるし、きちんとつくりこまれてるんだよね。どうでもいいくだらない話題ばかりなのに、実は<肩の力の入った>エッセイ。こういうの、とても好きだな。