はるがいったら(飛鳥井千砂/集英社)★★

はるがいったら
第18回小節すばる新人賞受賞作。

気が付けば他人のファッションチェックまでしている、完璧主義者の姉。何事も、そつなくこなすが熱くなれない「いい子」な弟。二人の間に横たわるのは、介護され何とか生きる老いぼれ犬。

両親の離婚により離ればなれに暮らす姉・園(ソノ)と弟・行(ユキ)。ソノは自分の体からスケジュールまですべて予定通りでないと落ち着かない完璧主義な女。だが長年、報われない恋を続けている。ユキは無意識にまわりに合わせてしまう、ちょっと老成した性格の高校生。本気で熱中することがなにもなくて、進路に迷う…。
この小説自体、そつがない。ついついページをめくっちゃう展開の上手さもあるし、キャラクターもきちんと描かれてるし、短いなかにたくさんのエピソードを上手く絡み合わせてる。
でもなんだろう。ぐぐっとこない。もちろんデビュー作にしては上手いとは思う。でもそつない作品より、荒削りでも「ぐぐっと」くる作品が読みたいな。
ま、好みの問題かもしれませんが…。